檸檬
彼女はいつも檸檬の香りがした。私はそれが好きだった。爽やかな朝の香り。彼女は恥ずかしいからやめてって言っていたけれど、赤くなった顔が見たくて、それでわざと顔を近づけたりしてた。部活終わりの放課後、私たち以外誰もいない教室の思い出。
彼女はバスケ部で、私はバドミントン部。いつも待ち合わせをして、必ず一緒に帰ってた。それがどんなに幸せだったか、彼女は知らなかったかもしれない。
みんな帰っていく中で、私は彼女と空き教室で話してた。私は彼女に触れたがって、抱きしめ合ったり、抱っこしたり、たまにキスもした。彼女は呆れながらも、私を受け入れてくれていた。彼女の肩に顔を埋めて息を吸ったら、流石に怒られたけれど、それでも続けてたら許してくれるようになって、毎日の日課みたいに、私は彼女の部活終わりの匂いを嗅いでた。その匂いは消臭剤の檸檬の香りと、彼女の汗の香りが混ざり合って、一種のフェロモンのように私の脳に届いた。私は欲を抑えるのが大変だったけれど、彼女はそんなことも知らなかったと思う。
でも、私も彼女の秘密を知ってるから、私の想いに気づかなかったことはおあいこにしてあげる。それは、私が彼女の匂いを嗅いでるとき、彼女も私の匂いを嗅いでたってこと。
今度教えてあげようかな。全部。
百合短編シリーズ みどり怜 @oreo1115
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