第22話
──週末明け──
「おはよう……ございまーす」
音を立てないように教室のドアを開き、囁くような声で室内に挨拶をする。
「ん?どうしたリアム、体調でも悪いのか?」
「大丈夫ですか?」
「いや、別になんでもないんだ!……なんでも」
アルフレッドが、こっそり教室に入るこちらに気づいた。
彼のお付きであるフラジールからも声をかけられる。
更に挙動不審に陥る。
「なになにリアム?どこか悪いの?」
少し離れた場所にいたエリシアが、事に気付いて近づいてくる。
「私たち仲良しでしょ!だから隠し事はなし!」
「なっ!僕だって親友だぞ!何かあったのならできる限り手助けもしてやるし、というわけで何か悩み事があるなら話せ!」
「ちょっと待って!あなたがリアムの親友?そんなの私が親友に決まってる!」
「僕の方がこいつとの付き合いは長い!だったら僕が親友なのが道理だ!!」
「なによ!」と「なんだよ!」と喧嘩を始めてしまった二人。
はぁ〜……ビクビクしてた自分がバカらしくなってきた。
「リアム〜ッ!このバカにはっきり言ってやって!!」
「リアム!!この分からず屋に真実を告げてやるのだ!」
こっちは変な因縁をつけられるんじゃないかとビクビクしてたってのに。
「「どっちが『お前』『あなた』の親友なのか!!」」
二人には僕の悩みも届かず、最早いつも通りの展開である。
僕にはそんな彼らさえいてくれれば良いか、という安心感さえ生まれてきた。
「わかった。それじゃあ発表しま〜す、僕の親友は……」
「「ゴクリ」」
「フラジールだ!」
2人は狐につままれたような顔をする。
「確かに、リアムとの付き合いの長さは僕とそんなに差がない」
目から落とした鱗を見つめるように、床を眺めて震えるアルフレッド。
「私は一体、どれだけの時間を費やせばそこにたどり着けるというのか」
どこかの騎士のような憂いを見せるエリシア。
「私がリアムさんの……嬉しい」
そしてハニカムフラジール。
「ま、同じくらいにみんな親しく思ってる」
三者三様な反応を見せる三人。
それはそれで面白かったのではあるが、優劣をつけるような関係でもない。
「そ……そうだな!」
「そうね!」
「それが一番素敵です」
パアッと明るくなるアルフレッドとエリシア。
フラジールも、その言葉には満更じゃなかったようで笑顔を見せてくれる。
こうした日常を過ごせる幸せを、僕は今……噛み締めている。
そして物語は、先へと進む。
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