第9話不人情
「起きて! 朝だよ!」
ノーフォーク公立学校、──通称は”スクール”。
スクールと呼ばれているのは何もこの学校だけではない。
スクールはアウストラリア王立魔法学院以外の国に認められた学校の総称である。
ほとんどのスクールが建つ領地の領主によって運営され、領民は税をしっかり払っていれば無償で通うことができる。
それから、スクールには高等部より上が存在しない。
中等部相当の6年生を卒業して入ることのできる高等部・学院部は王都にある王立魔法学院にしかない。
「私のノートでいいの!?……はぁ〜、これまでの努力がリアムの役に立つなんて、幸せ!」
在籍にはお金がかからないが、支給のない教材は各自で用意しなければならない。
この世界では紙は十分に流通しているが、印刷技術の発展が遅れている。
そのため教材は高価であり、新品を購入する、卒業生や上学年の学生に譲ってもらう、授業のノートを必死にとる、街の図書館、学校の図書館に通うことで各自教材を複写をしたりと、生徒によって対応は様々だ。
「ありがとう、お姉ちゃん」
「いいの。でもリアムがどぅぅうしてもお礼したいって言うなら、またお出かけに付き合って?」
カリナがこれまでにとったノートを教材として使わせてもらうことになった。
……美しい湖畔でピクニックくらいならいいか。
「はい、ローブ」
アイナが1羽の鷲の紋章が入ったローブを着せてくれる。
このローブはスクールが支給してくれるもので、鷲の紋章はノーフォーク領領主、兼、スクールを運営している公爵家の紋章を参考としたものだ。
だがこのローブは……かなり大きい。
普通は6歳からの入学が一般的なので、支給されるローブで一番小さいのがこれしかなかったのだ。
「やっぱり大きいわね……でもすぐに大きくなるから今だけの我慢よ」
ダボダボなローブをいつか華麗に着こなせる様になるためにも、早く大きくなりたいものだ。
「それから……はい、これ!」
ローブに続いて、アイナが差し出したのは長辺が30cmほどの箱だ。
「開けてみて」
箱を受け取ると、箱の蓋を外してと催促される。
「これもしかして、杖?」
箱の中にはグリップの先に赤い魔石のついた、1本の短杖が入っていた。
「それはね、昔、私が使っていた杖よ。杖には2種類あって、その小さい杖は調合や錬金なんかの繊細な魔法をアシストしてくれる。そして、杖は最初から作るよりも、ある程度魔法が上達してから新調した方がいい。最初から新品を買って成長に合わせて調整してあげられればそれに越したことはないんだけど……その杖は火属性の扱いに特化してるし……お下がりになっちゃうけど、普通の杖としては使えるだろうからそこは多めにみてね」
スクールでは授業中のみ練習用としてメジャーなトレントの杖を貸し出してくれる。
だから杖はそれを借りようと思っていた。
しかし、自分の杖があれば、授業以外の時間も練習がしやすくなる。
魔力の扱いに長ければ杖なしでも魔法を使える様にはなるらしいが、一定のレベルになるまではやはり杖は必須らしいし。
「ありがとう!母さん!」
これは本当に嬉しいサプライズだ。
この杖は一層これからの学びのモチベーションをあげてくれる。
「さ、それじゃあ入学式に行きましょうか」
「うん」
腰につけたホルダーに杖を仕舞い、いよいよ始まる学校生活に向けて胸を躍らせながら玄関を出る……今日は待ちに待ったスクールの入学式の日だ。
──スクール──
「いよいよ……」
門口に立つと、敷地内は子供と今日入学する子を持つ親たちで賑わっていた。
「新入生はこちらへ! 親御さんたちは魔法練習場の方へどうぞ〜!」
入学式は魔法練習場に設営された会場で行われる。
「また後でね」
「じゃあなまた後でな」
「じゃあね〜!」
僕は、アイナとウィルと別れて入学生受付の方へと向かう。
「入学生の子供たちは許可証を持ってこちらに並んでください」
入学生受付に並んでいる子供は、僕よりも大きい子ばかりだ。
「あれは……」
列に並んでいると、朝から入学式準備に駆り出されている在校生の中に、荷物を運んでいるカリナと……そう、ラナ! 入学試験をカリナの模試と間違えて持ってきて、更にそのまま受験させるという信じ難い行為を強行したレイアのお姉さんだ。
「リアムー!」
「カリナちょ、傷が!? わぁー!また怒られるー!」
カリナもこちらに気づいたらしい。
持っていた荷物の箱をパッと離し、オーイとこちらに両手を振っている。
当然、前触れもなく離された箱はそのまま落ちるわけで……カリナが落とした荷物を見て、一緒に荷物運びをしていたラナが横で何か喚いている。
「ハハハ……」
入学試験で会った感じ、お調子者で人に迷惑をかけるタイプに見受けられたが、あの子はあの子で苦労してそうだ。
やがて満足したのか、落とした箱を持ち直したカリナは横で何か言ってるラナと荷物運びを再開して校舎内に消えて行った。
「それじゃあ、校舎に入って突き当たりの教室まで行ってくださいね」
カリナたちが見えなくなってから数分後、ようやく受付を済ませ案内された新入生の待機室へと向かう。
──待機室──
『大学の卒業式は、見せてあげられなかった……心残りもある』
待機場所へと着いて、入学式が始まるまでの時間を一人で過ごしていた。
「おい、チビがいるぞ」
出会い頭になんとチビと……失礼な。
『これ、僕が言われているから主観的に捉えられるけど、他の新入生から客観的に見たらものすごいブーメランだろうな……』
いちゃもんつけてきた少年は、僕より少し背が高いくらいだろうか、新入生の中で一番小さい僕より少しだけ背が高いブービーチビだった。
「ア……アルフレッド様、ダ……ダメですよぅ」
「うるさい、フラジール!」
他の新入生とあまり変わらない背丈の女の子が、アルフレッドと呼ばれたブービーチビを咎めようとする。
アルフレッドはフラジールと呼ばれた女の子の言葉を無理やり制すと、再びこちらに視線を戻す。
「我が名はアルフレッド・ヴァン・スプリングフィールド。辺境伯、スプリングフィールド領領主アルファード・ヴァン・スプリングフィールドが次男である。喜べ。僕、自ら、我が舎弟として認めてやろう。どうだ、嬉しいだろう?」
辺境伯の次男。
ということはこのブービーチビ、もしかして貴族か。
ブービーチビとか名付けた僕は不敬罪か?……口に出してないからセーフか。
「スプリングフィールド?」
「なんだと? お前、この公爵領に隣接し、隣国にも接する超重要な我らが領地の名を知らないと?」
ノーフォークの情報なら日常会話程度で扱えるぐらいには把握しているが、他領に関してあまり情報を持っていない。
名前は聞いたことがある気もするが、下手な同意をしても面白くない。
スプリングフィールドは大領地と隣国に挟まれた中々血の気と野蛮さを要する領地の様だ。
「はい、知りません。私はこれからスクールに入学する身です。平民である私は隣接する領地の名も知らぬほどまだ未熟なのです」
「そ、そうか。まあいい」
動揺してる。
貴族っていうからなるべく丁寧に返したんだけど、物怖じしないのは想定外か。
初めの言動ほど、肝は座ってなかったらしい。
「で、では改めて……お前をこのスクールでの我が舎弟として認めてやろう。どうだチビ、嬉しかろう?」
そういえばそういう話だったっけ。
揶揄いがいのありそうなアルフレッドのせいで、すっかり忘れていた。
「お断りします」
取り巻きのパシリ認定されて大事な時間を無駄に過ごすのは嫌だ。
前世で空虚な時間だけは持て余していたから、何かに打ち込むことのできる情熱の大切さを身にしみて知っている。
後々面倒になるかもしれないが、ここはしっかりとお断り申し上げる。
「な、なぜだ! 新入生代表挨拶を任された僕の配下に加えてやろうというのだぞ? それに貴族である僕の誘いを断るなど! ふ、不敬だぞ」
確信した。
この傲慢野郎の下について夢に見たスクールライフを過ごすなんて絶対に嫌だ。
それにここは公爵領なのだからさ。
他領地の領民に対して手を出すことは難しいだろう。
「その……つかぬ事をお聞きしますが、なぜ他領地の貴族様がこの領地のスクールにいらっしゃるのですか?」
ノーフォークの貴族ならわかる。
しかしアルフレッドはスプリングフィールドの貴族。
通常であれば領のスクールか王立学院に通わせる、家庭教師を雇うなど他にもっとそれらしい方法があるだろう。
「バカが。確かに我が領地はスクールを置くことが許されるほどの実績を持っている。しかし、スプリングフィールドは他国に接する防衛線、もし隣国が我が国に攻めてきたときに真っ先に戦場となるのはスプリングフィールドだ。だから王は我が領地にスクールを置かれないし、スプリングフィールドの子供たちには特別に支援金を出してこの領のスクールに通うことを許された。貴族は一般的に王立学院に通うか家庭教師をつけて専門の勉強をするわけだが、僕は次男である。我が父は領民とともにこのスクールに通い、交流を深める様おっしゃった。それにこの街にはオブジェクトダンジョンがある。ここのスクールは他のスクールと比べて学ぶことが多い。故に、僕は今このスクールの入学生としてこの場にいるのだ。わかったか、チビ」
アルフレッドは事前に練習してきたかの様に長々とした説明を流暢に話す。
”チビ”以外は絶対練習したんだろう……涙ぐましい。
「自己紹介も、もうよかろう。さあ、舎弟として我が軍門に下るのだ!」
軍門って……中々なびかないからしびれを切らしてきたか。
「お断りします」
「なぜだ……なぜ!僕がここまで真摯に相手していると言うのに!」
「理由は二つ。まず一つは、あなたの下につく
笑顔で毒を吐いて、簡潔にお断りの理由を説明する。
ブービーチビと冷笑(せせらわら)うのは、やめておいてやろう。
「この様に恥をかかされたのは初めてだ! ええい、お前は我が家に伝わる拷問の魔法で罰してやる!」
アルフレッドの顔はどんどん赤くなっていった。
そして、腰から杖を引き抜くと杖先をこちらに向ける。
「嘘でしょ!?」
思わず、アイナにもらった杖を構えてしまう。
「アルフレッド様ッ!」
「なに?」
「喧嘩?」
「先生呼ばないと……」
場に緊張が走る。
『どうする……魔法の使い方はまだ一つも習っていない』
拷問ということは決して死ぬ様な魔法ではないのだろう。
しかし、絶対に痛い。
周りも相手が貴族だからか……助けに入ってはくれない。
『殴りに突っ込むのは危なすぎる、かと言って僕は遠距離で攻撃する方法も持ってないし……』
アルフレッドが呪文を詠唱するとともに、杖を囲う様に不思議な光の文字列が現れ始めた。
『ダメだ……何も思いつか……あっ、真面目に相手することはない!』
ここは無秩序な戦場の真っ只中でも、孤立無援の孤島でもない。
「ハハハッ! 僕、自ら鉄槌を下してやる! もうこの魔法は完成するッ!国境担う我が家に伝わる魔法の一つ、拷問魔法が!後は最後の魔法鍵(スペルキー)を唱えるだけだ!」
あっ……逃走の判断を下すにはもう遅すぎた。
「さあ、くらえッ! 我に仇なす者に痛みによる真実を!
呪文の完成とともに、アルフレッドの杖の先に集まった魔力の塊が飛んでくる。
「コレ、もしかしてほんとにヤバッ──!」
迫り来る光の塊に、攻撃態勢を解いて両腕で頭を守る様にして身構える。
……何が起こったのか、こちらに届く寸前で魔力の塊が霧散して消えた。
「あのー……」
アルフレッドが放った魔法がこちらに届くことはなかった。
「アルフレッド様ッ!?」
……アルフレッドが倒れた。
どうなってんの?
なんの前触れもなく地面に突っ伏したアルフレッドに駆け寄るフラジールがアルフレッドの容態を確認している間、室内に微かな静寂が心地悪い。
「よかった……ただの魔力切れです……」
「魔力切れ?」
「は、はぃ……。拷問の魔法は対象となった人の魔力が持つ防御性を破った上に、更に干渉するために多くの魔力が必要となる魔法なので……で、でもアルフレッド様は貴族だから魔力も多くて……だから、えぇっと」
こいつ……アホだ。
アホフレッドだ。
「教えてくれてありがとう」
「は、はぃ……」
要するにアレだ……エネルギー切れ。
「何事ですかッ!」
騒ぎを聞きつけた先生が到着した。
ここはスクールの在校生が監督していたから、きっと彼らが先生を呼びに言ってくれたのだろう。
「魔力切れですね……喧嘩と聞きましたが、何があったというのです?」
頭にはエナンを被り、見るからに知性に溢れている女性が倒れるアルフレッドの容体を見る。
診断はフラジールと同じ魔力切れ、まだスクールに入学する前だと言うのに症状を言い当てるなんてフラジールはすごい子だ。
「……左様でしたか。おそらく彼の持つ魔法防御の方がアルフレッドさんの放った魔法の魔力より大きかったのでしょう。子供とはいえ仮にも貴族、そんなアルフレッドさんの全魔力が乗った魔法は一定の指向性を持っていたはずです。故に魔法に込められて魔力が魔力切れといえど直前で霧散するということはあり得ない……あなた、お名前は?」
「リアムです」
「平民?」
「平民です……」
「平民のリアムさんですか……私は水・風・光の魔法と魔法陣学の授業を担当しているケイトと言います。不躾でお許しいただきた上でのことですが、あなたの親御さんは何をされている方でしょう?」
アルフレッドの容体を確認した後、ケイト女史は聴衆を始めて事実確認し、当事者の僕に名前と両親の職業について尋ねてくる。
『この流れはまずい……』
どうするべきか……ただでさえ我儘を言ってこの学校に入れてもらったのに、入学初日から親の素性を怪しまれるほどの問題を起こし、延いては生徒の問題児リストに入れられたり、貴族と揉め事起こしたから退学なんてなったりしたら遺憾も遺憾、ただ誘いを断っただけなのに……ハッ、これが権力という奴なのか。
「喧嘩が起きたらしいけど?」
「学長!」
「ケイト女史。在校生たちが新入生が喧嘩してるとふれ回っていたので立ち寄ったのですが……何かあったようですね。事の経緯の説明をお願いしても?」
「はい」
き、キタァあああああ! 僕の助け舟!!!
「つまり、攻撃を仕掛けようとして魔力切れで倒れてしまったと……。しかし困りましたね。魔力切れで倒れたということは、彼はしばらく目を覚まさないでしょう。彼は新入生代表挨拶を任された代表者……式ももうすぐ始まりますし、これは本当に困りましたね〜……」
倒れているアルフレッドを見れば、予定外の大事が起こった事は一目瞭然であるからして……気のせいだろうか、「困りました」を連呼するルキウスがチラッとこちらに目配せしたような気がした。
「そうですね。本当に困ります。公爵様も来賓にいらっしゃっているので開式は遅らせる事はできませんし、今直ぐにでも代理の者を選出せねば……しかしその代理の子が上手く代用者挨拶をできるとはとても思えません」
新入生代表挨拶は、成績優秀者ではなく、今年入学するもので一番位の高いものから選出される。
いわゆる貴族や大商人の商家といった、名家と呼ばれる家の子供が選ばれるわけだ。
異世界の貴族や平民といった区分がある社会で、今、僕が肌をゾクらせたばかりであるが、階級が支配する権力が最も強い世界だ。
スクールの新入生は、謂わば前世でいう公立小の一年生と同じようなもので、入学試験自体が僕以外の新入生にはなかったはずだから、成績優秀者の中から選ばないということは当然のことでしょうがね……ですがね……。
「ええ、そこで提案なんですがね……」
ルキウスにはケイトが溜息を吐いた問題を解決する策がある様だ。
「この、リアムくんに新入生代表挨拶を頼むのはどうでしょうか? 彼もいわば、問題を起こした関係者でありますし責任を取らせるという事でね」
嫌な予感は直ぐに的中した。
「しかし彼に挨拶を任せたとして問題の解決にはなりません。それに、本日ご出席なさっている名家の方々からも抗議の声が上がるのでは? 本日はアルフレッドさんの親御さんであるスプリングフィールド卿も御来賓としていらっしゃっていますし……何より彼、ごく普通の平民なのですよね?」
そうだそうだ僕はごく普通のちょっと異世界で過ごした前世の記憶を持つ平民だ!
ケイト女史!
もっと言ってやれ!
「それは大丈夫だと思います。あなたも聞いているでしょう? 今年は特別処置で、年齢が入学基準に達していないながらも、早期に入学した天才の少年がいると。彼がその特別措置でうちに入学した少年です」
心の声も虚しく、唯一の希望も粉々に打ち砕かれることとなる。
『天才とか言われても照れないぞ。……別に嬉しくないんだから!』
天才という言葉に、ちょっと嬉しくなってたりして。
「あぁ、まだ7歳なのに王立学院の中等部編入模試を満点で解いたという……9歳にしては小さいなと思っていましたがどうりで、彼がそうでしたか」
……小さいは余計では?
ちびっ子でこんなダボダボのローブを着ていれば違和感を抱くのは正しいのだろうが……そんなにまじまじと見られると恥ずかしい。
「今回の騒ぎはアルフレッドくんに非があったようだし、スプリングフィールド卿は王が国境を任せられるほどに誠実な方だ。事前に成り行きを説明すれば、ご納得してくださることだろう。それから、いきなり他の名家のご子息に代表挨拶を頼み失敗でもして御覧なさい。あなたの懸念の通り、親御さんから非難の声が上がりそうなものです。それよりも、この少年に代表挨拶を任せて失敗する方が傷も少なくずっと建設的でしょう?」
なにそのジェットコースター理論!?
言っとくけどこれでも19年の人生から引き継いだ一端のプライドは持ってるから失敗したらクッソダメージ受けるから!
それに僕の意見も立場も尋ねないなんて、本人の前でそれは酷くない!?
『まだ7歳の痛いけな少年を捕まえて責任がどうとかなんとか傷が深い浅いのなんだ……なに言ってるの? それとも僕が甘ったれなだけなの?』
持ち上げて落とす。
そして落ちる先は奈落だ。
白羽の矢をロックオンされてしまい、周りを見渡して助けを求める。
「えーと……」
周りを見渡すと、ケイトも、その様子を見ていた子供たちも、どこか憐れむような目でこちらを見ている。
中には僕と目が合いそうになって直ぐに視線を外す子も……如何にも育ちが良さそうな君、きっと名家出身の子供なのだろう。
自分は無関係だ、と言わんばかりに逸らした目を強く瞑って、こちらを見ないようにしている君のことだよ!……健気だ。
「あの試験に合格した君なら、ここにいる誰よりも上手くスピーチできるんじゃないかな?貴族であるアルフレッド君の面子を潰すような言動もあったみたいだし……ここは君に責任を取ってもらうのが一番だと思うんだ……プフッ、あ、いや失敬……ククッ」
周りを味方につけたルキウスの猛攻が続く。
『まさかここで特別措置を取ってもらった弊害が出るとは、幾ら何でも早すぎる! てか、学長先生はこっちが素なの?こんな真面目な場面で吹き出すとか、キャラ変わってるし……』
……誰も異を唱えない。
「でしょ? ね、リアムくん?」
そして、白羽の矢は放たれた。
「……はい」
できるよね……?と、こちらに問いかけるルキウスの顔はそれはもう満面の笑顔で、僕が付け入る隙はこれぽっちもなかった。
──ゲスい、ゲスいよこの畜生ッ!
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