第2章 出会いと再会 40

「全く彰人のやつどういうつもりなんだ!」一義


「はぁ…ねぇあなた、彰人は本気で言ったのかしら? さっきの、とても冗談を言っているようには見えなかったわ」里実


一時いっときの気の迷いだろ…あいつは所詮まだ子どもだ。 お祖母様に恋人を傷つけられてカッとなって口走っただけだ」一義


一義は里実から視線を逸らして必死にそう言ったが、きっとそうではないことは一義も本当はわかっていた。 でもそれを簡単に認めてやれるほど財閥グループが負う責任は軽くはなかった。


「あってはならないことだけど、もし彰人が説得してもどうしても我を通すと言ったら、あなたどうする?」里実


一義は里実の方へ振り向いた。

表情を見ると、その顔色は不安に帯びており、とても深刻な表情を浮かべていた。


それを見た一義はしばらく真面目に考えてから口を開いた。


「彰人がどうしても我を通すなら、親子の縁を切る」一義


そう言うと一義は里実のそばを通り過ぎるとそのまま部屋を出て行った。


“バタンッ…”と扉が閉め切られるのが音で伝わると里実は独りで静かに何かを考え始めていた。


あれから彰人は使用人に代わりの服を用意させて璃子を着替えさせたあと、二人で街に出ていた。


「東京ってライブで当たった時くらいしか来ないからあんまりちゃんと街を歩いたことないんだよね〜」璃子


「そっかぁ、でも商業施設とかたくさんあるけどおすすめの場所って聞かれるとどこも同じなような気がして答えられないんだよな」彰人


「良いよいいよ、私が適当に気になったとこ入って行くからあきくんは私についてきてくれればそれで」璃子


「あぁ、了解」彰人


明るく振る舞う璃子の様子に少し安心しているとしばらくして璃子がある建物の前でふと立ち止まった。


そこはブライダルフェア開催中の立て看板が目立つ高級な有名ホテルだった。


「璃子…?」彰人


「ねぇ、ドレスの試着やってみてもいいかな?」璃子


「えっ…」彰人


「いいじゃん、行こっ!」璃子


思わず戸惑う彰人の手を引くと璃子はそのままホテルの中へと入って行った。

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