第2章 出会いと再会 39

三千恵の行動にその場にいた誰もが騒然とする中、彰人は耐えきれず怒りの声を上げた。


「お祖母様!!」彰人


「あら、何かしら?」三千恵


「僕は、この家を継ぐ気はありません」彰人


「なんですって」三千恵


「おいっ、彰人!」一義


息子の突然の発言にとっさに止めようと口を挟む一義だったが彰人はそれに構わず言葉を続けた。


「元々そのつもりでした。 今日は彼女の紹介と後継者の座を放棄する話をするために一時的に戻ってきたんです。 お祖母様、だから今後僕に何の期待もしないでどうか、この屋敷で安らかにお過ごしください」彰人


すると彰人はまるで見せつけるように璃子の手を取って繋ぐと璃子は視線の先を上げた。


「行くぞ」彰人


「あきくん……」璃子


彰人は家族に背を向けるとそのまま璃子の手を引いて部屋から出ていった。


「待ちなさいっ!! 彰人!」三千恵


二人が部屋を出て行き、再び重い扉が閉め切られると三千恵はかつてないほどの危機感を抱いた。


それから彰人は璃子を連れて無言で屋敷の廊下を歩き続けていた。


「あきくん…」璃子


ふと後ろから声をかけられたところでようやく彰人は立ち止まると振り向かないまま彰人は呟くように言った。


「…ごめん。 祖母が君に失礼なことを」彰人


「別にもういいよ、あきくんのせいじゃないでしょ? それに、おばあさんから見たらそう思われても仕方ないよ」璃子


背中を向けていてもその声色だけで璃子の心情が彰人には分かった。


彰人は自分の家の事で落ち込む璃子を励ましたいと思うとそっと振り返って俯く璃子に向き合った。


「服着替えたら気晴らしに二人で出かけないか?」彰人


その頃、三千恵が一旦自室に戻り和実も自室に戻したあと里実と一義は夫婦の部屋に入るなりそれぞれため息混じりで口を開いた。

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