第2章 出会いと再会 36

「どうしたの?」璃子


次の言葉を言い淀む彰人を不思議に思いながら待っていると彰人はようやく意を決して口を開いた。


「実家のことで、璃子に言ってなかったことがあるんだ」彰人


「えっ…?」璃子


それから璃子は見ていたMVの動画を停止してイヤホンを仕舞って聞く態勢を整えると改めて隣りに座る彰人に向き直った。


「俺の実家は宝道グループ、財閥の家系なんだ」彰人


「へっ……」璃子


「俺は一応長男で財閥の後継者ってことになってるけど実家捨てて京都に進学したんだ」彰人


璃子は驚きのあまり彰人の話に相槌あいづちをするのを忘れたまま呆然とただ話を聞いていた。


「でも俺は実家に戻るつもりはない。 俺は家を捨てて卒業後も今のまま京都に残るつもりだ…」彰人


「あっ…うん、そうなんだ」璃子


「璃子…?」彰人


「いや、まさか実家が財閥だなんて思わなくて…だってほら、実家からもほとんど援助なさそうだったし、普通にバイトしながらアパートに住んでたしてっきりあんまり余裕がない感じなのかなって」璃子


「あぁ…実家とは無理やり出て行ってからほとんど絶縁状態だったから」彰人


「そうなんだ…。 本当に実家とは縁を切るつもりなの?」璃子


璃子は彰人の真意を確かめるように彰人の目を見てそう聞いた。


すると彰人は迷いなく答えた。


「ああ、そのつもりだーー」彰人


それからしばらくした頃、東京の日和たちの新居では予め決められていた予定があったため日和と光司は朝から支度に追われていた。


光司は基本的に夜寝るとき以外には部屋に居ないが誓約書の内容の関係上、結婚式や結納、グループ主催のパーティなど結婚関連か公的なイベントへの参加協力は義務付けられていた。

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