第2章 出会いと再会 34
里実は指示された通りソファー前のガラステーブルに持ってきた紅茶とお菓子をそっと並べて置いた。
それから里実は少し様子を伺ってから三千恵に声をかけた。
「お義母さま」里実
「まだ何か用なの?」三千恵
「彰人が戻ってくると聞きましたが、事実ですか?」里実
それを聞いた瞬間、三千恵の手の動きが一瞬止まった。
すると三千恵は初めて書類から顔を上げて向こう側にいる里実の方を見て話した。
「ええ、事実よ」三千恵
「私は何も聞いておりません」里実
「呼んだのは私だもの」三千恵
「彰人は後継者の座を捨てて勝手に出て行った人間です。 今さら呼び戻して何になります?」里実
「呼び戻してどうするかは私が決めることよ。 あなたに口出しする権利はないわ」三千恵
「もしかして、日和の式に出席させるつもりですか?」里実
「だったら何なの?」三千恵
「今このグループの後継者候補は和実です。 彰人を後継者として式に出席させるおつもりでしたら、私は母親として断固反対致します」里実
里実は強い意志を見せつけるように三千恵に真正面からそう言うと、少ししてから三千恵は椅子から立ち上がって里実の方へ近づいてきた。
何も言わずに近づいてくる三千恵を内心不気味に感じつつじっとその場に立ち尽くしていると目の前まで迫ってきたところで三千恵は歩みを止めた。
「確かに、あなたは母親だわ。 そうだったわ…」三千恵
真っ直ぐに里実の目を見てそう言っただけなのに里実は三千恵に得体の知れない恐怖を肌で感じて思わず唾を飲み込んだ。
「私はこれでも年寄りだから、最近物忘れが酷くてあなたが母親だってことをすっかり忘れてたわ。 次からは彰人を呼んだら母親のあなたにもちゃんと言うから安心しなさい」三千恵
奇妙な微笑みを浮かべて三千恵はそう言った。
里実はそれ以上三千恵に対して発言することが出来なかった。
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