第2章 出会いと再会 32

あれから日和は新居の自室でこの結婚の意味と会長の意図について独り思考を巡らせていた。


『分からない…なぜ、お祖母様は今さら私にここまでするの? そもそも私をあの家から追い出すこと以外にグループにとってこの結婚のメリットって何なのかしら?』日和


「必ず何かあるはずよ。 何かが隠されてるわ…」日和


自室にある机の椅子に座りながらそう呟いていると部屋の扉の向こうから玄関へ向かう足音が聞こえてくるとそれに気づいた日和はすぐに立ち上がって見に行った。


玄関の方へ向かうとちょうど靴を履こうとしていた光司を見つけて声をかけた。


「どこか出かけるの?」日和


日和の声に振り向いた光司は平然とした様子で言った。


「俺はこれから毎日夜寝るとき以外は女のところにいるから飯の心配も何もしなくていい。君も好きにしてろ」光司


「えっ……?」日和


戸惑う日和を背にして光司は靴を履いて玄関のドアノブに手をかけようと腕を伸ばしかけると日和は光司の袖を掴んだ。


「待って!」日和


到底納得なんて出来なかった。

だから日和は精一杯の思いで引き止めた。 でもその思いとは裏腹に光司は背を向けたまま一言だけ返した。


「いくら妻でも抱けない女に興味はない」光司


日和はその瞬間、激しいショックを受けて袖を掴んでいた指の力さえ入らなくなると光司はドアを開けて足早に玄関を出て行った。


ひとりでに閉まるドアがまるで今の日和の心を表しているようだった。


とてつもない孤独感に襲われた日和は光司を責める気力すら湧いてこなかった。

力のないか弱い足取りで玄関からリビングへ戻った日和はこの先に待ち受ける地獄のような結婚生活に思いを馳せ独り震える手を拳に変えて握りしめていた。

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