第2章 出会いと再会 31
「でも、俺にとっては初めから健気に必死で頑張る日和の姿は妹として映っていなかった…俺はその想いを抱いたまま大人になって、日和が妹としてそばで成長していくのを見るのが耐えられなかったんだ」彰人
「彰人……」直哉
彰人は初めて誰かにその心情を打ち明けた。
そしてそれを聞いた直哉は初めて彰人の抱えていた想いを理解出来た。
「でも、血が繋がってないなら…望みはあるんじゃないのか?」直哉
「もうすぐ結婚するんだ。 親たちが決めた相手と」彰人
直哉は返す言葉が見つからなかった。
どこか遠くを見つめながらそう話す彰人は普段見ることがないほどとても悲しげだった。
「俺は日和が幸せになるならそれでいいんだ」彰人
「幼いときに親を失くしたあいつはこれまでずっと家のことに耐えてきた。 せめて結婚してささやかでも幸せになってくれたら、俺は一生兄でいい」彰人
「彰人…」直哉
彰人は本気で日和を想っていた。
憧れでも、幻想でもなく、ただ一途に想いを寄せている。 その事が隣りで見ている直哉には痛いほど伝わっていた。
でもその感じる痛みの分だけ、直哉は璃子のことが頭に浮かんでいた。
「璃子ちゃんのこと…どうするんだよ…?」直哉
「ああ、ちゃんとけじめはつけるつもりだ」彰人
「けじめ?」直哉
「学祭の後、璃子を連れて一度実家に戻る。そしたら、婚約者として正式に璃子を紹介するつもりだ」彰人
不意に風が吹いたその瞬間、直哉の瞳が微かに揺れていた。
だけどその揺れた瞳に彰人は気づいていなかった……。
心に感じる動揺を必死で押し殺そうと直哉は無理やり笑顔を作って自分からその言葉を口にした。
「結婚する気なのか?」直哉
「あぁ…」彰人
低い声で頷く彰人の表情はとても暗く僅かに俯く視線の先はまるで何かを悟っているようだった。
だから親友の変化にも気づけなかった…
直哉の固まった表情と隠し続けていたその想いに彰人はまるで目を向けていなかった。
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