第2章 出会いと再会 29

同棲初日にも関わらず光司の素っ気ない態度に内心戸惑いを感じていた。


「部屋は全部見たんですか?」日和


「あぁ。俺が来た時から部屋割りは決められていた。 寝室はなく、一番奥の部屋が俺ので、その手前の部屋が君のだ。 ベットもそれぞれの部屋にシングルで置いてある」光司


日和は話の内容もることながら淡々と説明する光司に違和感を覚えた。


「もしかして、私たちのこと何か聞いてます?」日和


その瞬間、ページをめくりかけた光司の手が止まった。


光司の言葉を待ってじっと見つめていると光司は顔を上げて日和に視線を移した。


「君は逆に何も聞いていないのか?」光司


「えっ…?」日和


日和の反応から光司は何かを察すると独りで苦笑いを浮かべた。


「本当に何も知らないんだな」光司


「何のことですか?」日和


「俺たちは仮面夫婦でいるようにと君のおばあさんである会長に言われて誓約書を書いたんだ」光司


「えっ……!」日和


光司の言葉に日和は思わず開いた口が塞がらなかった。 しかし、光司の話はこれで終わらなかった……


「会長が俺に提示してきた誓約書の内容には、妻である君とは決して子どもを作らないこと。 これをもし破った場合、うちの実家の会社を倒産させて責任を取らせると書いてあった」光司


「どういうこと…? なぜお祖母様が?!」日和


「理由なんか知らないよ。 ただ、君との夫婦としての触れ合いは一切禁止されている。 その代わりに外での不貞行為は一切目を瞑り必要であれば隠蔽いんぺいにも協力するとさ…」光司


「君、本当にあの家の家族なのか?」光司


冗談混じりに日和にそう聞いた。


しかしその質問に答えられるほど今の日和に余裕はなかった…


なぜ会長がそんな誓約書を書かせたのか、日和にはその真意と目的がまるで分からなかった。

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