第2章 出会いと再会 28

璃子は直哉の方へ振り向くと安心させるように笑顔を見せるその顔をじっと見つめていた。


「大丈夫だって。 もっとあいつのこと信じてやれよ、彰人の心には璃子ちゃんしかいないから」直哉


「……そう、だよね」璃子


直哉は璃子のために嘘をついた。


この絵を見たときから直哉だけは彰人の本心を確信していた。


その心の奥に本当は誰が居るのかも…でも直哉は璃子がずっと彰人に好意を寄せていたことを知っていた。


そんな璃子に彰人には他に好きな人がいるなんてたとえそれが真実だったとしても直哉には言えなかった。


『大丈夫だよな…いくら好きだって言っても相手が妹ならあいつも覚悟して璃子ちゃんの告白を受け入れたはずだ。 そうだ、俺が心配するようなことは何も起きないさ』直哉


自分自身にも言い聞かせるように心の中でそう言った。


その頃、東京ではいよいよ日和が光司との同棲を始めるため三千恵が手配した車に乗り新居へ到着していた。


新居は都内屈指の新築高級15階建てマンションで日和たちに与えられたのは最上階の1番広い部屋だった。


運転手に案内されて部屋の玄関前まで辿り着くと日和は運転手に声をかけた。


「ここでいいわ。鍵は自分で開けて入るから」日和


「かしこまりました。 では、私はこれで失礼致します」運転手


日和の申し出に従い運転手は部屋の鍵を渡すとそのままエレベーターへ乗り込みその場を後にして行った。


1人になった日和は僅かな緊張を感じながら鍵を開けてドアノブに手をかけた。


玄関に入るとそのまま真っ直ぐリビングへ向かった日和はリビング扉を開けた。


「あぁ、来たか」光司


リビングでコーヒーを飲みながら雑誌を読んでいた光司は日和の方へ一瞬視線を向けてそう言うとまた雑誌のページに視線を戻した。

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