第2章 出会いと再会 23

それから部屋を出ると和実はすぐに口を開いた。


「納得いかないわ!」和実


和実の一言に歩みを止めて里実は振り返ると冷静に諭すように言った。


「分からないの?! お前は日和のために後継者の座を捨てるつもり?」里実


「いい、和実はこの宝道財閥の後継者候補なの。あんな粗末な子を殺して自分の人生を棒にしても良いの?」里実


里実の言葉に和実は僅かに視線を逸らして聞いていた。


「たとえお前が日和を殺してもお祖母様はきっと揉み消してくれるでしょう。 でもね、その瞬間からお祖母様は後継者候補からお前を外すわ! お祖母様はそういうお方よ」里実


「わかった…私が軽率だった」和実


里実に説得され渋々納得すると里実は付け加えるように言った。


「お前がわざわざ手を汚す必要はないわ。 もうじきこの家から出て行くんだから気にしないで」里実


「わかってるけど、なんかあの女はかんさわるのよ」和実


「それでも気にしないで。所詮取るに足らない子なんだから」里実


里実は言い聞かせるようにそう言うと携帯を取り出して知り合いの医師に連絡した。


その頃、部屋のベットサイドに座って医者の到着を静かに待っていた日和はさっきの出来事に違和感を感じていた。


『和実何してるの!』里実


「なぜ、私を助けたの?」日和


これまで、和実が日和をいじめることは何度もあった。 だが、さっき和実が日和に向けていた殺意は一瞬とはいえ本物だった。


日和が仮にどうなっても困ることなど里実にはないはずだった…我が子に罪を犯させたくなかったのか、どの考えもしっくり来ず、日和は謎の違和感を拭い切ることが出来なかった。

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