第2章 出会いと再会 21

夜遅く、日和が自室で一人過ごしていると不意に部屋の扉が開いたことに気づいて視線を向けると入ってきたのは和実だった。


日和は読んでいた本を閉じて椅子から立ち上がると和実を出迎えた。


「こんな時間に勝手に入ってきて何の用?」日和


「別に。ただもうすぐこの屋敷からあんたが出て行くって聞いたから荷造りでも手伝ってあげようと思っただけ」和実


「気遣ってもらって有り難いけど、残念ながら出ていくのはもう少し先だから荷造りなら自分でするわ」日和


「はっ? なんですって、偽者が生意気な口きいてんじゃないわよ」和実


和実はその瞬間、盛大に日和の頬をビンタした。


激しく痛々しい音が部屋中に響き渡ると和実はそれだけでは気が済まなかった。


「お母様だけじゃない、お祖母様まであんたみたいな貧乏女のために婿を見つけ、家も家具も全て用意して! 気に入らないのよ、財閥でもないくせにムカつくのよ!」和実


あまりに身勝手な和実の発言に日和は許せず手を上げてやり返そうとすると和実は嫌な笑みを浮かべて言った。


「私を叩いたら、また地下に閉じ込められるわよ」和実


和実の言葉に日和の振り上げた手はそれ以上進むことが出来ずに微かに震えながらそこで止まってしまった。


何もかもお見通しとばかりに和実はフッと鼻で笑うともう一度同じ頬をビンタした。


そして間髪入れずに今度は反対側の頬を思いきり叩くと和実は愉快な笑い声をあげた。


「はははっ! 鏡で見てみたら? なんと無様で滑稽な姿だこと」和実


日和は振るえなかった手を必死で握りしめた。


「ねえ、私のことをお嬢様って言いなさいよ」和実


「ほら、グズグズしないでさっさと言いなさいよ!!」和実


恐ろしい表情で日和を限界まで追い詰める和実だったが日和は決して口を開かず和実を睨み返した。

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