第2章 出会いと再会 19

城見家の自宅ではリビングのソファで一人グラスに作ったハイボールをあおる光司の姿があった。


しばらく考え事をしながらそうしていると背後から足音がして不意に振り返った。


「珍しいな」光司


「なんか落ち着かなくてな」誠司


首の後ろをさすりながらやってきたのは兄の誠司だった。


「俺にも1杯くれよ」誠司


そう言われた光司は兄から渡されたグラスを受け取ると大きめの氷を入れてハイボールを作ると向かいに座る兄の目の前にグラスを置いた。


「はい」光司


「サンキュ」誠司


それからしばらく互いに無言で酒を飲み進めていると不意に口を開いたのは誠司のほうだった。


「どうだ、財閥に入る気分は?」誠司


「別に…案外そうでもないかな」光司


「なんだ、随分と余裕だな」誠司


「余裕とは違うけど。 ただ…俺が財閥に入ったら兄貴の立場が危なくなるかも」光司


冗談めかした言葉の言い回しとは裏腹に光司は挑むような鋭い視線を一瞬だけ兄に向けていた。


しかし誠司はそんな弟の視線にも気づくことなくグラスをあおると笑って流した。


光司はいつまで経っても兄から危機感すら抱かれない受け流す態度に静かな苛立ちを感じていた。


「そんなことよりさ、お前も政略結婚とはいえ妻を持つ身になるんだからちゃんと相手のこと大事にしろよ」誠司


「兄貴こそ、もうすぐ30だろ? 相手いないのかよ」光司


「今はいないな…俺も父さんに頼んでお見合いでもしよっかな」誠司


薄ら笑いを浮かべながら余裕有り気にそう答える兄に光司はわけもなく苛立ちが増した。


すると光司は一気に居心地が悪くなると残りの酒を全て飲み干してグラスを空にした。


「じゃあ俺、部屋行くわ」光司

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