第2章 出会いと再会 18

そして一気にからになった空き缶を適当にその辺に置くと彰人は携帯で誰かに電話をかけた。


「はい…」栗山


電話した相手は三千恵の秘書兼執事の栗山だった。


「戻るよ。 あの家に」彰人


「彰人さま…!」栗山


「ただし一時的にだ。 それと、日和の結婚式の前に行きたい。 学祭終わったら行くから来月の最初の土曜に帰るよ」彰人


「かしこまりました。 では会長にもそのように伝えておきます」栗山


それから彰人は話を終えて電話を切ると、悲哀に満ちた表情で携帯を持つ腕を下ろした。


「これで良かったんだ…何もかも、もう忘れるべきなんだ」彰人


その日の夜、璃子は自宅の自室でくつろいでいると彰人から電話がかかってきた。


「もしもし、どうしたの?」璃子


「璃子…来月、実家に一度戻ることにした」彰人


「来月のいつ……?」璃子


「最初の土曜。 出来れば、璃子にも一緒に来てほしい」彰人


電話越しの彰人からの誘いに璃子は信じられない思いでいっぱいになり思わず涙が一雫頬に流れ落ちた。


その頃、東京の屋敷では日和が結婚式までのスケジュールを三千恵から伝えられていた。


二人が一緒に住む家から住み始めるタイミングまで事細かに予定されているその内容はもはや管理に等しかった。


「家と家具はもう用意しているから来週土曜日の朝9時に車で新居まで送るように手配しておくわ」三千恵


「かしこまりました」日和


日和は表情に一切の感情を出さないようにつとめながらそう返事を返したが、膝の上で丁寧に合わせられた手の下では密かにスカートのぬのを握りしめていた。

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