第2章 出会いと再会 17
光司が立ち去ったあと、里実は日和に眼光鋭い視線を向けて何かを確かめるように聞いた。
「さっき彼と何を話していたの?」里実
「大したことではありません。 他愛もない世間話です」日和
日和は眼光鋭い里実を安心させるようにそう言うと先に出口へ向かって歩き出した。
しばらくしてホテルのフロントまで戻るとやたらと上機嫌な剛三が戻ってきた日和の姿を見つけて手を振っていた。
「やぁ! 日和さん、こっちこっち」剛三
手を振り返すことはしなかったがすでによそ行きの愛想笑いを浮かべていた日和は優しく声をかけた。
「嬉しそうですね。 何かあったんですか?」日和
「あはははっ! 実はね、式場抑えられたんだよ! しかも希望通りに今年の12月25日にね!」剛三
まさに天下を取ったような喜びに浸る剛三は高らかに声をあげて笑っていた。
しかし、この報告を聞いた日和にとってはやはりこの強制される政略結婚は受け入れ難いものがあった。
その場で一人表情を曇らせる日和の姿に誰も目を向けていなかった。
そしてあれから京都では夕方、彰人は今日は彰人の部屋に泊まりたいとねだる璃子を上手くなだめて自宅に送ったあとアパートの自室に戻り一人で璃子から言われた言葉を思い出しながら自問自答を繰り返していた。
薄暗い寝室でベットサイドに腰掛ける彰人は携帯に保存されている璃子とのツーショット写真をただ見つめた。
『俺のためについてくると言っている彼女を本当に幸せにすることが出来るのか?』彰人
『そして俺は、本当にこのままあいつを忘れて生きていけるのか……?』彰人
尽きることのない疑問と対峙していた彰人に答えは出せなかった。
それでもこのまま悩み続けることも彰人には許されなかった。
彰人は携帯を持ったままベットサイドから立ち上がるとそのまま台所の冷蔵庫へ向かい350の缶ビールをおもむろに取り出すと開けて一気に飲み干した。
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