第2章 出会いと再会 15

二人の間に流れる宇治川の水面みなもがやたらときらきら輝いていた。


紅葉も相まって美しいはずの景色は彰人の心に影を作り不思議と鬱陶しく感じさせた。


景色の方へ視線を彷徨わせているとそんな彰人の心を知ってか知らずか、璃子はテーブルの上に乗せていた彰人の右手を上から包むように握った。


「私、信じてるから…ちゃんと決めてくれるって」璃子


璃子は真っ直ぐに彰人へ視線を向けてそう言った。


そんな璃子の眼差しにこの時の彰人はこれ以上何も答えられなかった。


一方、東京では顔合わせも順調に終わったあと

日和は談笑する両家の隙を見て一人化粧室まで逃げてきていた。


気持ちを落ち着けようと手洗い場の水を勢いよく流すと流れる水の音に意識を集中させるように日和は息を整えた。


『想像以上に生々しく、気持ちが悪かった…』日和


『あのまま黙っていて本当に正解だった。 今日初めて顔合わせをしたのにもう結婚式の日取りまで決めて、さらには衣装のカタログや料理まで…いえ、もっとおかしかったのは、その話をあの親たちは誰も私たちに意見を聞かなかった』日和


日和は顔合わせ中の両家の会話の様子を思い出しながら心の中でそう言った。


どんどん意気投合する三千恵と剛三、そして里実の3人はどんどんカタログを用意させ式場選びまでも自分たちが主導で決めていった。


そんな中で、日和は顔合わせ中ほとんど会話しなかった光司のことを気にかけていた。


『あの人が私の夫になる人なのね…どんな人なのかしら』日和


上質なスーツを着ていたがどことなく垢抜けた雰囲気からオシャレにかなり気を使うタイプなのだろうかと日和は内心推測していた。

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