第2章 出会いと再会 14

彰人は璃子が何か悩みながら話をするとき飲み物をいじる癖があることを知っていた。


「もし戻るって言ったらどうするの?」彰人


「うん…そうなったら、私も行くよ」璃子


璃子は真っ直ぐに彰人を見てそう言った。

そして彰人は彼女の手元に視線を移すと先ほどまで飲み物をいじっていた手はストローを持ったままその動きを止めていた。


すでに彼女の心は決意している。

彰人にはそれがすぐに分かったーーー。


だけど、迷っているのは彰人の方だった…


璃子が東京に来る。 それはつまり彰人との将来を本気で見据えているということになる。


そう思った瞬間、彰人の心の中に僅かな迷いが生まれた…本当に自分には目の前の彼女を幸せにすることが出来るのかと……。


「ねぇ、あきくん……」璃子


璃子の声にふと我に返ると、璃子は改まった様子で彰人に告げた。


「無責任なこと言うかもしれないけど…私はあきくんが一番大事だから。 だから…私の進路、あきくんが決めて」璃子


璃子の言葉に彰人は静かに驚いた。

これまで真剣に芸術を学んできた彼女にはきっと彼氏である自分にすら言っていない大切な夢がきっとあるんだろうと、そばで見ていて何となくそう思っていた。


なのに彼女は、これからの人生を決める大事な進路をよりによって“彼氏”に決めさせるのかと彰人は思わず呆れつつも困惑した。


「なんで…俺にそんな大事なこと決めさせるんだよ」彰人


「だって、あきくんが決めないからじゃない!」璃子


「えっ…?」彰人


「私は本気よ。 言ったでしょ、あきくんが戻るなら私もついて行くって」璃子


「でももし、あきくんがこっちにずっといるって言うなら私もそうする」璃子


「璃子…」彰人


「わかったでしょ? 私にはあきくんが全てなの」璃子


「この気持ちは嘘なんかじゃない…だから、あきくんが決めて」璃子

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