第2章 出会いと再会 12

少し先に到着して予約されていた席で待っていた城見家は慣れない場の雰囲気についよそよそしい態度を取ってしまっていた。


席に着いてから緊張からか水を何杯もおかわりしていた。


「あぁ、す、すみません…」」剛三


空いたコップに度々水を入れに来るウエイトレスにすらコップをわざわざ両手に持ち恐縮する父親の姿を横目に見ながら光司は思わず止めに入った。


「父さん、いい加減に落ち着けよ。 逆にみっともないぞ」光司


「そんなこと言ったってしょうがないだろ! 」剛三


息子からの注意に開き直る剛三だったが、そうしているうちに入口の扉が開かれた。


「お待ちしておりました」支配人


レストランの支配人自らが出迎えると入ってきたのは三千恵会長たち宝道家の面々だった。


店の玄関で優雅に支配人に手荷物を預ける姿を席から見ていた剛三と光司はその煌びやかさからまるで住む世界が違うと思い知らされるような感覚に陥った。


「あれが、財閥……」光司


気づくと支配人とのやり取りを終えた三千恵たちがこちらにすたすたと向かってきていた。


「どうも、お待たせしてしまって申し訳ありません」三千恵


にこやかな愛想笑いを浮かべて挨拶をすると光司たちは慌ててその席から立ち上がった。


「どうも、はじめまして…」光司


そう言ったときだった、光司は向こうからやってくる財閥の一行の一番後ろにいた日和の存在に気がつくと何とも言えない衝撃を受けた。


濃紺のレース調のワンピースの裾が揺らめくと彼女自身が放つ世界も揺らめいて見えた。


まるで自分のことなんかその瞳には映っていないんじゃないかと感じるくらいミステリアスで冷たい空気をまとった女性だと光司は日和を見た第一印象でそう思った。

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