第2章 出会いと再会 10

部屋のドアを開けるのと同時にそう言うとあからさまに怒っている母親に璃子はそのとろけるようなにやけ顔のままとんでもない発言をした。


「ふふっ…お母さん、私結婚するわ」璃子


「はぁ?!」璃子の母


突然の報告と明らかに平常ではない娘の状態に半信半疑でその言葉を聞いていたが目の前でベットの上で悶えながら喜ぶ娘の姿にかける言葉はなかった。


同じ頃、日和は日曜日の顔合わせの時に着る服を部屋に用意されるとそれをぼんやり眺めていた。


「私は…結局逃れられないのね」日和


結婚してもなおこの家から離れることが許されない現実に日和は一人で虚しさを感じていた。


それから3日後、顔合わせの日がやってきた。


朝から日和は綺麗にメイクを済ませ長い髪も普段はしないアップスタイルにすると用意されていたワンピースに着替えた。


濃紺が美しいそれは全身レース調に作られていて膝まであるスカートの丈が上品だった。


そして上着に黒のポンチョを羽織り黒のクランチバックを持って部屋を出ると玄関前で待機している車へと向かった。


顔合わせに参加するのは当人の日和を除くと会長の三千恵とその秘書兼執事の栗山と養母ははの里実だった。


日和は屋敷の玄関を出ると見送りに来た養父ちちの一義に挨拶をしてから停車しているリムジンに里実に続いて乗り込んだ。


一方、城見家では光司が柄にもなく立派な高級スーツを着せられ息苦しさを感じていた。


「よし、これで完璧だ!」剛三


今日の顔合わせのためだけに剛三が光司のスーツを生地から選んで特注オーダーしたのだ。

満足げな表情を浮かべてしきりに頷く父親の姿に光司は思わずため息をついた。



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