第2章 出会いと再会 9

「良かった…最近授業終わったあと作業室に籠ってること多かったからもしかしたら断られるかもな〜とかちょっと考えてたの」璃子


璃子は彰人自身も気づかないうちに気を使っていた。

彰人の邪魔をしないように本人すらも知らない間にそっと見守られていた。


そんな璃子の純粋な想いに胸を打たれた彰人は本当の意味で区切りを付けるためにこの瞬間で決意した。


「なぁ…璃子」彰人


「ん? なぁに?」璃子


「…今度、一緒に東京の実家に来てくれないか?」彰人


「えっ……!?」璃子


声にもならない声で驚く璃子は唐突な彰人からの誘いに嬉しさを感じつつも何と返せばいいのか思わず言葉に迷ってしまった。


そして数十秒間の沈黙のあと、璃子は勇気出して言葉を返した。


「いいよ……」璃子


そう答えた璃子の顔は彰人からは見えなかったが、璃子は電話越しで良かったと思うほど赤らめる頬に熱が一気に集まっていくのを感じていた。


「良かった。 じゃあまた日にち決まったら連絡するから」彰人


いつもと変わらない穏やかで爽やかな声色のまま彰人はそう言って電話を切った。


彰人は暗くなった画面の携帯をテーブルの上に置くとソファーに腰掛けてポツリと呟いた。


「はぁ…良かったんだ。これで」彰人


一方の璃子は彰人からの思いがけない誘いに完全にときめいて舞い上がっていた。


「これってご両親に私を紹介するってことだよね」璃子


自宅にある自分の部屋から電話をかけていた璃子は思わずとろけるようににやけてしまう顔を抑えられず携帯を持ったままベットにダイブしごろごろ寝返りながら喜びを爆発させた。


「きゃ〜!!」璃子


すると下から騒ぎに気づいた璃子の母親が2階にある璃子の部屋まで上がってきていた。


「ちょっとどうしたの?! あんたの声がリビングまで響いて来たんだけど!」璃子の母

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