第2章 出会いと再会 5
その日の夕食後、日和は執事の牧田に言われていた通り祖母・三千恵会長の部屋に向かっていた。
「失礼致します」牧田
そう言って大きな扉を開くと牧田の後ろに続いて日和は部屋へ入った。
「会長、日和さまをお連れしました」牧田
窓際に立つ着物姿の三千恵に報告を済ませた牧田は一礼するとそのまま部屋を後にして行った。
三千恵と日和は部屋に二人だけになると先に口を開いたのは三千恵の方だった。
「座りなさい」三千恵
「はい…」日和
大きな黒革のソファーの真ん中に腰を下ろした日和は一体祖母から何を言われるのかまるで検討がつかなかった。
日和は座ったまま三千恵の方を見つめて次の言葉を待っているとしばらくして三千恵は日和の方へ振り返った。
「お前に縁談がある」三千恵
三千恵の言葉に一瞬驚いたがそのとき脳裏に浮かんだのは血の繋がらない兄、明の顔だった。
「断ることは出来るのですか…?」日和
「この縁談を用意したのは私だ」三千恵
三千恵のその一言でこの縁談が絶対に断れないものなのだと日和は察した。
「お前は15年前、この家に拾われて生き延びられた…感謝しているならその恩を返しておくれ」三千恵
言うべき答えなど最初から決まっていた。
日和は膝の上に行儀良く乗せていた手でぎゅっとスカートの裾を掴むと覚悟を決めて答えた。
「お祖母様の意思に従います」日和
すると三千恵は密かに不敵な笑みを浮かべた後、何かを手に持ち日和のそばまでやって来て目の前にそれを放り投げるようにテーブルに置いた。
「これが相手のプロフィールだ」三千恵
日和は三千恵が渡してきたそれを恐る恐る開いて確かめるとそこには住所と氏名、生年月日、更に交友関係から家族関係、出身校まで全て書かれていた。
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