第2章 出会いと再会 4
同じ頃、京都のとある有名芸術大学に素性を隠して通う宝道財閥の長男・彰人は授業終了後、1人で作業室に残り夢中で油絵の制作を進めていた。
しばらくすると作業室の扉が開いた。
「よっ! 学祭の準備か?」直哉
入ってきたのは彰人の同期で友人の満島直哉だった。
「まあな…」彰人
「ふぅん……」直哉
彰人の絵を見て何かを察した直哉はちらっと書いている本人に視線を向けた。
「なあ、アッキー」直哉
「ん? 何、なおくん」彰人
「お前、彼女と別れたの?」直哉
「いや、仲良くやってるよ」彰人
そう答える合間も一度も手を止めることなく彰人は完成へ向けて作業を進めていると直哉は珍しく真面目な様子で彰人に助言した。
「だったらこの絵、学祭に出すのやめといた方がいいぞ」直哉
「なんで?」彰人
「なんでって…あのなー。 女の子ってのは彼氏が他の女の子気にかけてるのが浮気の次に許せないらしいぞ。 お前知らないのか?」直哉
呑気な返しに直哉は段々呆れてくるとそんな彼に彰人は絵を真っ直ぐに見つめたまま静かに聞いた。
「そんなんじゃない……」彰人
「なぁ、妹に恋したことあるか?」彰人
直哉は思わず言葉が出てこなかった。
その理由はひどく驚いていた以外にはなかったが、驚いたのは質問よりも、隣りにいる友人が見たこともないような苦しげな表情を浮かべていたからだった。
「お前……」直哉
「悪い、変なこと聞いた。 彼女のことは心配するな。 これ聞かれても妹だから大丈夫だろ」彰人
そう言って次の瞬間に見せた表情はさっきまであった苦しさの面影も見せないほどいつものように笑っていた。
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