第2章 出会いと再会 3

写真に映る二人はまだ10歳と12歳で当時誕生日プレゼントに父・一義からカメラを買ってもらった彰人がたまたま屋敷で二人だけの時に日和をこっそり庭に連れ出し一緒に撮っていた。


当時、厳しい毎日を送っていた日和にとって唯一優しく接してくれていた彰人の存在はまさに心の支えになっていた。


そしてそんな“血の繋がらない兄”の存在は徐々にまだ幼かった日和の中で初恋へと変わっていったのはもはや必然的だった。


しかし、ささやかな美しい思い出すらも日和は本の1ページに閉じ込めなければいけなかった。


“コンコン…”


「日和さま、失礼致します」牧田


不意打ちに聞こえたノック音に日和の肩は一瞬だけ上下に揺れると急いで写真をまた元のページに挟み込み本棚に戻した。


「どうぞ、入って」日和


扉の向こう側に向けて返事を返しながら足早に椅子の前まで戻ったところでちょうど執事の牧田が扉を開けて入室してきた。


「お勉強中にお邪魔してしまい大変申し訳ございません。 実は三千恵会長がお戻りになりまして日和さまにお話があるので今夜、夕食の後にお部屋に伺うようにとのご伝言にございます」牧田


「分かったわ」日和


「では夕食のお時間になりましたらまたお呼び致します」牧田


そう言い残し牧田は扉を静かに閉めて部屋を後にした。


再び一人きりになると日和は大きなため息を一つつくとふと机の上に積まれた残りの本の残量を目で追った。


「あと5冊…」日和


ふと何もかも投げ出したい衝動に駆られた。

しかし、いつも本の山に手をかけてそこでやめてしまう…結局自分には何も出来ないのだと悟ったように諦めるのだ。

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