第1章 二人の令嬢 9

「栗山。 今すぐうちのグループが抱えている下請けの企業リストから1社外しなさい」三千恵


「はい、会長。 しかしなぜ突然?」栗山


「交渉が成立したの。 上場もしていない会社だけど、こちらの条件をほとんど飲むと言ったわ」三千恵


「こちらも向こうの要望には潔く応えなくては」三千恵


「なるほど、かしこまりました。 では早急にリストから算出致します」栗山


「判断基準はお前に任せるわ」三千恵


「かしこまりました」栗山


少しして三千恵は部屋に戻ると予め呼んでいた里実が訪ねてきた。


「失礼致します。 お義母様ーーー」里実


里実は部屋に入るなり一礼すると、三千恵は大きな真っ白のソファーに一人腰かけていた。


「構わないわ。 座りなさい」三千恵


「はい、お義母様」里実


里実が三千恵の向かい側に腰を下ろすとおもむろに話を始めた。


「今日、話をつけてきたわ」三千恵


「では…」里実


「交渉成立。 しっかり誓約書も書かせたわ、年内に式を挙げさせましょう」三千恵


「はい、かしこまりました」里実


「里実さん、 あの子をしっかり教育しておいてちょうだい。 この結婚に逆らわないように」三千恵


三千恵が釘を刺すのに対し里実は軽く微笑んで返した。


「心得ております。 しかし、この結婚については喜んで受け入れるのではないでしょうか」里実


「それはなぜ?」三千恵


「この家から離れられるからです」里実


自信と確証を持って里実はそう答えた。

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