第1章 二人の令嬢 8

「私が用意させたの。 通訳官にさせることは出来ないけど、せめて語学の勉強くらいはさせてあげようと思ってね」里実


「お母様…!」日和


「全て読破するまで部屋から出てこなくていいから、その方が集中出来るでしょ?」里実


「しかしお母様、私は午後から授業が!」日和


里実の仕打ちに部屋に閉じ込める気だと焦る日和はとっさに抗議するも里実には全く通用しなかった。


「お黙りなさい!! お前はこれまで病欠すらしたことがない、とっくに卒業に必要な単位は取得しているはずです。 大学には私から連絡しておくから何の心配もせずここで勉強していなさい」里実


「お母様っ…どうかお許しください!」日和


「お母様っ…!!!」日和


里実の言葉に絶望する日和は部屋を出て行く養母の背中を追いかけるもそのまま扉を閉め切られた。


『宝道日和には自由というものは存在しない』日和


『ずっと生きる事と引き換えにしたのだと…子供の頃から私自身に言い聞かせてきた』日和


『だけど、時々思う…この屋敷の中で、お母様やお祖母様の言うとおりに従い、息を吸って吐いて…そうしているだけで私は…本当に生きていると言えるのだろうか……?』日和


里実の怒りを買い、軟禁状態となってしまった日和はあまりのショックでその場に膝を着いて心の中でそう言った。


それからしばらくして、屋敷に今朝早くから出かけていた現グループ会長の三千恵が外出先から帰宅した。


執事やお付きのメイドたち総勢10名ほどが玄関前に立ち並び出迎えた。


「お帰りなさいませ」栗山


三千恵会長の秘書兼筆頭執事の栗山はリムジンから降りてきた着物姿の主のそばに行き会釈をするとすぐに荷物のクランチバックを預かった。

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