第1章 二人の令嬢 7
そのとき日和は悟ったーーー。
拾われたあの日から、宝道日和には自由というものは全くないのだと。
激しくショックだった…それでも、日和が宝道家に、里実に一切何も言わずに耐え続けているのはたとえ自由がなくとも両親に捨てられたあの日死ななかったのはこの家に、里実に拾われたおかげだと内心感謝していたからだった。
そしてその感謝の思いに比例するように捨てた両親への憎しみもまた日和の中で確かに募っていた。
“コンコン”
扉の向こうから不意に聞こえてきたノック音にそれまで夢中で読んでいたはずの日和は慌てて本を閉じて机の引き出しに隠した。
ガチャっと部屋の扉が開かれると入ってきたのは里実だった。
「お母様…」日和
机を背に立ち上がって迎えた日和に里実は視線だけで座るように促した。
日和は大人しくそれに従い机の椅子に腰を下ろすとその直後、里実は突然思いきり日和の頬をビンタした。
「誰のおかげで今のあなたがいると思ってるの?!」里実
「拾ってくださったお母様と宝道家のおかげです…」日和
「だったら! 金輪際、恩を仇で返すような考えは捨てなさい!」里実
すると里実はまるで言い聞かせるかのように日和の両肩を掴み真正面から向き合って言い放った。
「無責任に雨の中捨てられたあなたを助けて財閥の令嬢にしてあげたのは誰だと思ってるの!」里実
「良いこと。 あなたが令嬢としてこの家に恩を返すためにはこの家のために生きることよ」里実
「分かったら二度とこの家から離れようなんていう考えは捨てなさい!」里実
「はい…」日和
日和は一度目を閉じてそう頷いて返した。
すると再び部屋の扉が開くと今度は執事の牧田が10冊ほどはある本の山を日和の部屋に運んできた。
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