第1章 二人の令嬢 3

「おはようございます」日和


入ってきた日和を見て最初に口を開いたのは2歳下の妹の和実だった。


「ふふっ、私たちを朝から待たせるなんて随分偉くなったわね日和」和実


「よさないか和実。 朝から姉を呼び捨てとは無礼だ」一義


「お父様、私はこんな忌まわしい貧乏人を姉だと思ったことは一度もありません」和実


和実がそう言った瞬間、その隣りに座る母の里実がバンっとテーブルを叩いた。


「日和、朝からお前のせいで空気が悪くなったわ。 謝りなさい」里実


「申し訳ございませんーー」日和


丁重に頭を下げて謝罪するとようやく日和は食卓の席に着いた。


日和は父、一義の隣りに座ると早速朝食の料理が目の前に並べられた。


「あの、お祖母様は?」日和


宝道グループの現会長である宝道三千恵ほうどうみちえの姿がこの日は何故か見えなかった。


そのことにふと気づいた日和がそれとなく聞くと答えたのは父の一義だった。


「お祖母様は今日は朝から特別な接待があるらしくて朝食は車の中で取ると仰ってもう出かけているよ」一義


「そうでしたか…」日和


祖母の三千恵が今朝から不在の理由を知った日和は何となく気にかかりつつもそれ以上は口を出さずに朝食のクロワッサンに口をつけた。


その後、朝食を済ませると早々に会議があると言って一義は屋敷を出て会社に向かうとそこには日和と和実と里実の3人だけが残っていた。


すると食後の紅茶を飲んでいた里実がおもむろに日和に視線を向けて話し出した。


「そうだわ。 日和、あなた学校卒業したら進路はどうするつもりなの?」里実


「はい、お母様。 一応、通訳官の道に進もうかと考えています」日和


「うわっ地味」和実


薄ら笑いを浮かべてティーカップを片手にそう言ったが日和は全く気にしていなかった。

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