第1章 二人の令嬢 2

それから15年後、季節は秋の10月中旬。松下日和はあの日を境にこの世から姿を消して日本有数の財閥一族、宝道ほうどう家の令嬢・宝道日和ほうどうひよりとして何不自由なく生活していた。


朝6時30分にいつもの目覚ましのアラームが広い部屋に鳴り響くと日和は慣れた手つきでそれを止め、まどろみに酔いしれることもなくすぐにベットから這い出た。


洗面台で身支度を整えて部屋に戻ると大きなクローゼットから日和はオフホワイトのワンピースを選び取り着々と支度を進めていった。


ある程度メイクまで済まして最後にリップグロスを形のいい唇に乗せた。


胸の高さまである艶やかな黒髪が美しく伸び、切りそろえられた前髪がその育ちの良さを物語、透き通るような白い肌は清楚でどこか儚げで、そんな姿見に映る彼女はまさに美しい正真正銘のご令嬢だった…


しかし、日和はそんな人形のような自分の姿が大っ嫌いだったーーー。


“コンコン”


「どうぞ」日和


ノックの音に反応して扉の方へ向かって声をかけると入ってきたのは執事の牧田だった。


「日和さま。 皆さまが既にお席に着かれてお待ちしております」牧田


「分かったわ。 すぐに行く」日和


牧田は扉を背にして押さえ道を開けると日和はすたすたと牧田の前を通って部屋を後にして行った。


長い廊下を歩き続けるとしばらくして大きく重厚な観音扉が日和の前に現れた。

牧田が扉を開けて、日和を中へ通すとそこには一際ひときわ大きなシャンデリアが当たり前に飾られ、広く長いテーブルに適度な感覚を空けて座る家族たちが一斉に入ってきたばかりの日和に視線を向けていた。

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