第2話 書き込む

頼の母親である込は、自分が責任をもって手紙を預かったことを三日後には忘れていた。彼女自身が忘れっぽい性格というのもあるだろうが、息子も同じころにはすでに忘れて次の遊びに夢中になっていたため、特に催促がなかったからというのもあるだろう。

 そのため次に思い出したのは、一週間後にインターネット上のチャット友達と話しているときであった。




Kome そういえばこの前こんなことがあったわ。息子に手紙を渡されたの。

Senn  へーお母さんいつもありがとうとかそういう?

Kome いや違うのよなんか私もよくわかってないんだけどね縁らしいの。

Senn  縁っていうのはエン?人の結びつきとかご縁がありますようにとか

Kome ええその縁…いろんな人に手紙のリレーを繋げていって縁

Senn  なにそれすっごくロマンチックじゃん息子さんすごいね

Kome そこまで考えてやってるわけじゃなくて思い付きよ…

Senn  だってそんなの普通思いつかないし…思いついたって実行できないじゃん?

Kome 実行できないから困ってるのよ…ねえどうすればあの子納得するかしら

Senn  どうすればって私がその数珠繋ぎリレーに入るわよ

Kome …

Kome ええSennさんが?いやいやそんなに大したものじゃないのよ

Kome むしろ逆に私は止め方が知りたいくらい

Senn  なんでよもったいない、子供の自由な発想だよ?尊重しよ?

Kome  うーん

Senn わたしは全然迷惑じゃないよ。むしろ手伝わせて欲しいくらい。

Kome そう?じゃあお願いしようかしら…

Senn  任せてくださいよ!お母さんは胸張ってください!

Kome なんかありがとうねえ無理させちゃってない?

Senn  だから全然ですってば。遊び心大好き少女よ!

Kome 助かるわー。忘れたから聞かれたら大変になっちゃうとこだった

Senn  komeさん嘘つけないですからねー

Kome もう…ほんとよお…

Senn  リレーの一番最後にお子さんに返事した方がいいですよね?

Kome じゃあ役所に私書箱あった気がするからそこに送ってもらおうかしら

Senn  いいじゃないですか。わたし早速準備に取り掛かりますよ


Kome  思えば私たち顔すら知らないのにすごいことやってる気がしてきたわ

Senn  インターネットの繋がりもまたよし。


Senn  人はどんな形でも出会い、分かり合い、話せる。それがいい。

Senn  私はそう思ってますよ

Kome Sennさんってたまにいいことおっしゃりますよね

Senn  たまにじゃないですけどね!

Senn komeさんちょっと砕けてきましたね、もっとおしゃべりしましょうよ

Senn  あそうそうさっきの件ですが

Senn  やり方もろもろ、全部わたしに一任してください。面白くしますよ!

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