繋がる縁と言葉の螺旋階段

@KAOHIMA

第1話 頼む

「まま~お手紙書いた~」

「お手紙?」

母はのんびりと尋ねた。5歳になったばかりの息子、頼がまた新しいことを始めたのだろうと思ったのだ。きっと何かテレビかユーチューバーに影響されたのだろう。

「誰にお手紙書いたの?お友達?」

もしそうなら届けてあげようと当然の疑問を聞いてみると息子はちょっと不思議そうな顔できょとんとして、しばらくしてから口を開いた。

「かんがえてなかったー」

「あらーそうなの。じゃあどういうお手紙なの?」

「うーんとねー」

息子はたどたどしく、しかし自分の思っていることを確実に説明しはじめた。

「この前ね、テレビでお手紙を出したらその人と縁ができるって言ってたの。だからお手紙たくさんの人に読んでもらえばいっぱいいーっぱい縁ができるって思ったの。」

身振り手振りをしつつ話をする。その特徴的な変身ポーズから、母はきっとこれは戦隊モノの一幕なのだろうと思った。見損ねたら駄々をこねる特に好きな番組だ。

「いっぱい縁がほしかったから、誰に出すかって決めてないや。ねえまま、どうしよう?」

母は返答に困り目を泳がせる。想像もしたこともないシチュエーションに回答がまとまらない。息子のことはそれはもうとても好きだが、こうしてたまーにちょっと突拍子がないことを言うのには手を焼いていた。それが子供の自由さだとわかりつつ「ああまたかあ」なんて思うのは仕方のないことだろう。

 しばらくしてから結論をまとめた。

「そうねえ、じゃあ最初はままが受け取るわ。そしたら頼くんの縁はままが受け継ぎます。そしてその縁を別の人に、また別の人につなげてもらって…そしたらたくさんの縁ができるわよ」

その答えに息子は目を輝かせる。

「本当?」

「ええ本当よ」

母は手のひらを上に向け受け取る意思をみせる。息子はやんわりとそして託すようにその上に手紙を置いた。

「やったー!ままお願い!」

「ふふ、任せてね」

その言葉を聞いて安心したのか、息子はすぐにおもちゃ部屋へと駆けていった。

 残された手紙を見て母はつぶやく。

「これどうしようかしら…」

ちょっとした悩みの種が増えたところで、とりあえずその内容を読んでみることにしたのだった。



「こんにちは、僕は頼といいます。

好きなことはテレビを見ることです。

特に好きなのはモモタロウレンジャーです。サブリーダーのブルーレンジャーが特にかっこよくて好きです。

あとかけっこも好きです。

好きなたべものは塩ラーメンです。とってもおいしいです。

将来の夢はまだ決まっていません。

今欲しいものはゼンダの伝説の最新作です。

おかあさんはすごく優しい人です。とってもおいしいご飯を作ってくれます。大好きです。」

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