第6話 山の素人達と山の探索決定
「どうします?」
「えっとこんにちは!加賀です!裏で武器作ったり車のメンテしてます!鶏とった人です!!」
集まってる人に宣言する。高校生にとって自分は知らない不審者かもしれないし、肉の権利も周知させたい。
彼らが山で死ぬとしても彼らの自由だけど知ってることを何も言わずに死なれるのは目覚めが悪いし死なれてゾンビになられるのも怖い。
「おぉ、それは素晴らしい、だけど立入禁止の山にはいったのはいただけませんな」
何処にでもいそうなおっちゃん、この避難所の取りまとめをしている安本さんだ。
自衛隊員を退役して会社の経営をしている人だとかでどこかしらカリスマのあてリーダーをしている。一応ここには高校生だけではなく大人もいる。八百屋のおばさんもいれば会社員に漁師、警察官や自衛官だっている。
ただ治安の悪化からこれ以上は基本的に受け入れられないということが決まったがそれでも自衛の術を持たない赤子や弱者をできる限りを助けようと努力している。
「すいません、でも立入禁止は初耳です」
「君は……高校生では?」
「近くの大学に通ってました。ついでにいうとこの山の近くにじーさんが土地持ってて近くまで来たことがあって土地勘があります」
「おぉ!なら頼りになるな!避難所の食料も心もとないしできれば裏山でなにか採取したいんだが……この山は危ないと皆が言っていたから立ち入らないようにしていたんだが鶏がいるなら卵がとりたい、君はどう思うかね?」
山で食料か、それは採れると思う。じーさん達は美味しい山菜をいつも山ほど持ってきてくれていたしかなり歩くが田んぼに流れる水の水源があって魚が少し釣れるぐらいの池も途中にあったはずだ。
それでもこの山の入口は別だ。人が入れるように出来ていない。
「多分何も事前知識無しで行くと……ここの半分は死ぬと思います。」
「理由を聞こうか?」
「単純に地形の問題ですね、ここの裏山ってかなり険しいんですよ」
自分一人なら要所を知っているから、山の怖さを知っているから行ける。
「何人なら引率できる?」
「絶対に命令を聞くなら多分4人、中継に人をおいていいなら8~16人ほどでしょうか、道の問題もありますし」
「………」
山と街の常識はあまりにも違う。舗装されていないし音の情報や土の地面や斜面……見えていない情報にまで気を配り、人間の知覚を限界まで使ったとしても油断できないのだ。
せめて行くなら山を歩いたことのある人間だけで行きたい。それとゾンビ倒せるような人で。
「それでももちろん命の保証も食料確保も約束できませんし、もしかしたら人を見たかもしれません、いやゾンビかも」
「規模は?」
「一人ですが……やっぱ行きたくないですね」
「斥候か?…………たしかに、私も高校生を危険に晒すのは本意ではないのだが……いや、何処かの段階で裏山への探索は必要なんだ、市街地は暴徒が多く発生しているしね」
違う、高校生の心配じゃなくて僕が怖いの!ゾンビ怖い!!
けど、なんか「こいつ凄い、わかってやがるな」みたいな目で見られると訂正しにくい!
「任せてもいいかな?」
「で、あれば人数がいますので狩猟や採集よりも命優先で獣よけに音を出すかどうかだけ決めてください」
熊や猪、野犬に鹿は本当に恐ろしい。それがどう動けばいいかわかる危険の少ない街と、まともに動くことも出来ない山の中では全く危険度は違う。
できれば音をガンガン鳴らして獣よけをしながら移動したいがゾンビや暴漢がよってくる可能性もあるし……いや、自分と違って武器を持った彼らが来るのなら大丈夫だろうか?
「できればなにか狩って食料にしたいのだが、どうだろう?あまり音を出し続けて悪漢がよってこないとも限らないし」
「鹿や猪は本当に怖いですよ?」
「まぁそれもわかるが」
そんなわけで避難所のトップ、安本さんと大人3人に高校生8人、12人が一緒に来ることになった。
できれば食料は確保したいが偵察がメインだ。参加者は皆集まって教室のホワイトボードで説明する
なんで僕がこんなことをとも思うが今後もしもゾンビが山に大量にいたとすれば逃げ場はなくなるし、一番裏山に近いおやっさんとの住処が一番危ない。できればこの人たちに駆除してもらわないと……。
「えー、今回ここの裏山の危険性を説明させていただきます。加賀です。まずここの裏山はくっそ危ないですので説明します」
「そんなに危ないのか?」
「普通のちょっと険しい山だったらさぁ行こうって言えるんですがここの裏山は要所が危なくて、なにかあった時にパニックになると全滅の可能性もあります」
じーさんの話では高校が立てられる前は開発ブームがあったとかでここももっと山の奥まで人が住めるようにもっと山を削るはずだったが重機でもなかなか壊せない岩盤があったり、高低差があって危ないので中途半端に開発が終わったそうな。
いくつか説明し、危険なポイントや山ならではの怖さを教えた。多分100%は伝わっていないだろうがそれでも生存率につながるのなら伝えた方がいい。
山に入ったことがなければ山の怖さを知らないのは当然だし……何も起きないと良いなぁ。
「ちなみに山に慣れている人は?」
4人だけだった、安本さんは山での訓練をしたことがあるそうで頼りになるが加納という大人は日本の中でも難易度の高い槍ヶ岳を登頂したそうで、あとは小野田くんは富士山を鍛錬で駆け上って……頭が水色の水が出せるという藤原さんは登山は詳しくが山菜採りが趣味で何度か山に入ったことがある。残りはピクニック程度。
安本さんを見ると苦笑いして経験者四人でそれぞれ山について話すことになった。
多分山の怖さや歩き方を学ぶには何度も山に慣れる必要がある。こんな場所でテレビでも同じようなことを話されても半分も理解してないだろうが……あぁ不安である。
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