第7話 フェンスチェック、山歩き
「小野田くん、そこの根っこ気をつけてね」
「はい」
「小野田くん、そこの木に蛇、切れる?」
「はい」
「藤原さん、それ以上横に広がって歩くと危ない人が通った足跡通るようにして」
「すいません」
山から高校に猪や野犬が出てこない理由は猪よけの壁もあるが裏山に入ってすぐの地形が悪いのが原因だろう、急な斜面、両手を使ってよじ登らないと普通の子は行けない結構な段差、曲がりくねって移動しないと3メートルは落ちる天然の罠……。
それと山ならではの怖い理由は他にもある。全方向に注意しないと何処に脅威が迫ってくるかわからないし、土が平らではないから人としてまともに動くことも出来ない。更には歩いてきた道が振り返ってわからないということがある。
「全員動かず、音を抑えてください」
もしもゾンビがいるとしたらこの近くだ。もう接敵してもおかしくない。
両手を耳に沿って広げて周りの音をよく聞く……山の怖さは音にもある。いつもと違って周りに木々があるせいか、集中していても至近距離に獣がいることもよくある。風の音に混じって足音が聞ければ……
「どうした?」
「静かに」
山の奥にまで意識をやって………何もいない。
獣よけのトタンよりも向こう、人かゾンビがいたとすればこのあたりだったんだけどな。
「このあたりですね、人を見かけたのは」
「なるほど」
「此処から先、獣よけのフェンスよりも先なら山菜はあると思いますが」
「いや、まずはフェンスを確認しようここに4人、左右に4人ずつでどうだろう?」
「良いと思いますが、僕を戦力に数えないでくださいね?」
「わかってる、なにか注意点はあるかね?」
注意点か、言ってしまえば山についての注意点だけどそういうことじゃないだろう。
「左の道は少し険しい部分があるので僕も行きます。右の道はフェンス沿いに行けば道は安全ですがフェンスが急に曲がったところで帰って来てください。下は市街地ですぐに急斜面です」
山において地形や癖を知っているのはそれだけで貴重な情報だと思う。どちらにしても一緒に行くべきだと思うけど、仕方ないか。
山に慣れていない人間は結構疲れているようだ、まだ入ったばかりだけど山での消耗と市街地での消耗は段違いだ。イノシシにいきなり襲われることもあるし全方向集中しろってしつこく注意したのが良くなかったかも知れない。
「それと3班に分かれるので動けないや助けてくれの合図は決めておこう、ホイッスルを持つのはここの待機班、右に行くものは木と木でコーンコーンと長めで鳴らす、左はコンコンと短く2回鳴らす。了承は1回どうかね?」
「わかりました」
「了解です」
安本さん、小野田くん、藤原さん、そして自分で左の道。
ここに残って待機組がもう動けないと疲れてる数人、右の道にはまだ体力が残ってる組に任せる。
「それでは探索開始で、今回はイノシシよけの鉄板のチェックだけにしよう、山はすぐに暗くなるし危ないからね」
「「「「はいっ!」」」」
安本さんは声に自信があるというか、言う通りにすれば全てうまくいきそうな風格を感じる。
今のところ食べれそうな野草をチェックしたのと小野田くんの蛇肉だけだ。
「ここからもう少し歩きにくいから気をつけてね」
「「はいっ」」
「加賀くん、君がいてよかったよ」
「ありがとうございます」
それにしても小野田くんと藤原さんは髪の毛がよく目立つ、白髪の安本さんと合わせると赤青白にときて自分の黒だ。
少し危ない道だし気合を入れて進む。久しぶりの山だけどくっそ怖いゾンビがいるかも知れないと思うと集中せざるを得ない。
「そう言えば藤原さんはなんで残らなかったの?」
待機組はゾンビが出た中間地点の付近の学校側を少し探索している。藤原さんは山菜採りが好きだと聞いていたしそのほうが効率がいいかなって思ったんだけど……。
「あー、俺が火を使うんで、ほら、山火事があったら怖いなって」
「すげー納得」
途中いくつかあるきにくい地点はあったがもうちょっとでじーさまの家だ。武器とかあれば良いんだけどな。
ピー!………ピー!………ピー!
「後ろからです!」
「戻ろう!」
中継地点で何かあったらしい、そこそこ離れているが戻る。
ゾンビか?ゾンビが現れたのか?!帰りたくない気もするが、帰らないとな。
「えっ痛っ!?」
藤原さんが見えにくい根っこでこけた。――――………最悪だ。
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