内政干渉
次の日、キャラバン隊は出発しようとしていた。ユーラス王国の王都へ・・・。運び屋たちは二日酔いから回復してラクダを荷物に載せて隊列を整えていた。そしてカドルをはじめとするブブカ族が見送りに来た。ジャック隊長が言った。
「では我らは出発する。この森のことは王様に伝える」
「頼む。このままでは我らはこの森から追い出されてしまう」
「ではまた・・・」
ジャック隊長が合図をしてキャラバン隊は出発した。だが途中でカジコ開拓社のメカニカがエーカーの森に向かっているのを見かけた。
「奴らがまた押し寄せてきた。キャラバン隊はここで休止してくれ。俺はちょっと行ってくる。ルマンダ。あとを頼む」
ジャック隊長はそう言ってラクダをメカニカの方に向けた。カジコ開拓社を追い返すために・・・。
それを見ていたジークがソミオに言った。
「奴ら懲りないな。俺らがいないうちにやってしまうと思ったのだな」
「ああ。そのようだ」
「隊長がバシッとまた言ってくれたら奴らも引き上げるだろう」
「そうだといいが・・・」
ソミオは嫌な予感を覚えていた。前はすぐに帰って行ったが、こんなに早くやってくるとは・・・カジコ開拓社は強引に勧めようとしているのかもしれないと。
ジャック隊長は進んでいるメカニカの横に並んでラクダを走らせた。
「おい! どこに行く! エーカーの森を破壊することは我らが許さん!」
するとすべてのメカニカは停止して、その1台からヨードル社長が降りてきた。
「困りますなあ。また妨害ですか?」
「先日も言ったはず。この地に手を出すと我らが黙っていないと」
ジャック隊長はヨードル社長をにらみつけた。だがヨードル社長は引く様子はない。
「我らはきちんと手続きを踏んでいる。未開なこの地を開拓しようとしているだけだ」
「いや、違う。お前たちの狙いはこの地に眠っているショウイ鉱石だろう。そのためにこの地を犯すことは間違いだ!」
するとヨードル社長はニヤリと笑った。
「わかったのか・・・。まあ、いい。その通りだ。この地にあるショウイ鉱石を掘り出せば様々な機械に利用できて生活は便利になる。こんな森の中で原始的な生活など営まなくても済むようになる」
それに対してジャック隊長は大きく手を広げた。
「それが正しいと思っているのか! 生活は便利になっても先祖から受け継いだ魂がなければ幸せにはなれない。このブブカ族の生活を見ろ! 彼らは今のままで幸せに暮らしているのだ!」
だがその言葉はヨードル社長には響かなかった。
「ふん! そう思うのは勝手だが、こちらにはこちらの都合がある。工事は行う!」
「それを我らが阻止すると言ったら・・・」
「何の権利があってそう言うのだ。私たちはユーラス王国の正式な事業としてこの仕事を受けているのだ!」
「なんだと!」
「お前たちがしていることは内政干渉だ。手を出すとユーラス王国が黙っていないぞ!」
そう言われてしまうとジャック隊長は反論できない。それにメカニカの後には馬に乗ったユーラス王国の兵士も続いていた。
「さっさ行くんだ! 俺らにはユーラス王国のジン執行官がついている。王国の兵も連れて来た。妨害するなら我が国に弓引くものとみなすとのお言葉ももらっている」
ヨードル社長はそう言うとメカニカに乗り込み、すべてのメカニカを出発させた。ジャック隊長はそれを止めることができなかった。これ以上はユーラス王国と争うことになってしまうと・・・。メカニカの大群はエーカーの森に入って行った。向かう先はジョルジュ大木のようだった。
「まさか・・・あれを倒すつもりなのか・・・」
止めるすべのないジャック隊長はキャラバン隊に戻るしかなかった。
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