狙い

 キャラバン隊の宿舎の一つから黒カラスが人知れず飛び立った。それはしばらく飛び続けてエーカーの森を出て、そこに待ち受ける男の左腕に止まった。それはネクロマンサーの幹部、オベールだった。


 その黒カラスはキャラバン隊に紛れて込んだスパイからのメッセージを運んできたのだ。オベールは黒カラスを近づけると、それは彼の耳にメッセージを伝えた。


「うむ。そうか。面白いことになった」


 オベールはつぶやいた。そして黒カラスに口を寄せて何やらささやくと、


「行け!」


 と左腕を頭上に突き上げた。すると黒カラスは飛び立ってまたエーカーの森の方に戻っていった。


「高みの見物と行くか。場合によっては手助けしてやってもいい」


 オベールはニヤリを笑ってエーカーの森の方に歩き出した。


 ◇


 キャラバン隊の宿所の前では隊の者が多く集まって並んでいた。彼らは頭を痛そうに抱えて辛そうにしていた。前日の宴で酒を飲み過ぎて二日酔いになっていたのだ。その列の先にはリーナとジュールがいた。


「はい、次! ・・・」


 2人はヒーリング魔法の施術を行っていた。それを和らげたいと皆に頼まれて施術していた。その多さにリーナとジュールは悲鳴を上げていた。

 その中にはカーナもいた。彼女も飲み過ぎてひどい頭痛に襲われていた。施術を受けたものの気分の悪さは完全には抜けない。


「もう酒はやめる・・・」


 そうつぶやきながら宿所に戻ってすぐにベッドで横になった。



 一方、ジャック隊長の宿舎にルマンダが戻って来た。


「ルマンダ。ご苦労だった」

「隊長。調べてみてわかりました。彼らの狙いが・・・」


 ルマンダは宴の間もこの地の様子を調べていたのだ。


「この森にショウイ鉱石がかなり埋蔵されているようです」

「ショウイ鉱石?」

「はい。メカニカなど機械の心臓部の制作には必須のものです。かなりレアなものなので高値が付きますし、ユーラス王国では産出されなかったために遠くの国との取引に頼っています」

「それがこの地にあるのがわかったのか」

「それでこの森の地面を掘ってショウイ鉱石を掘り出そうとしたのでしょう。だがそれにはブブカ族が邪魔になるというわけです」

「そうか。それでカジコ開拓社は躍起になっているのか」

「ショウイ鉱石が産出されるとあればその儲けは計り知れないものですから」


 ルマンダは言った。だがジャック隊長はそれだけではないように感じていた。絡んでいるのはカジコ開拓社だけでないと・・・。


「いずれにしても大きな問題を含んでいるかもしれない。慎重に行動しなければならない」


 ジャック隊長は腕組をして考え込んだ。

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