絡み酒
疑いが解けたカーナとジークは牢から出された。そして集落の広場でキャラバン隊を歓迎する宴が催された。その中心に大きな火を焚き、その周りでブブカ族が伝統の踊りを踊るのである。見たこともない楽器から不思議な音色の音楽が生み出され、ブブカ族は伝統の衣装に身を包み、体を震わせ、両腕を上げて、足で地面をかき鳴らしていった。その迫力は皆の心を熱くしていった。
「楽しんでいただいているかな?」
座っているジャック隊長の前にカドルが来た。
「ええ。すばらしい」
「喜んでいただいてうれしい。我らはこの大地とともに生きてきた。それを表した踊りだ」
「あなた方は先祖代々、自然と一体となり・・・それで幸せで豊かな人生を送れることを知ったのだろう」
「ああ、そうだ。この森と神聖なジョルジュ大木とともに我らがあるのだ」
「そうだな」
「だがカジコ開拓社がこの森を狙っている。今日は帰ったがまた来るだろう」
「この森は保護しなければならない。どうだろう。我々はユーラス王国の王宮にあいさつに行く予定だ。そこでヨハン王にこのことを頼んでみるつもりだ」
「そうしてくれると嬉しい」
カドルとジャック隊長は酒を酌み交わしながらそう話していた。一方、運び屋たちが座っている場所ではカーナが酔っぱらって皆に絡んでいた。
「私は悪いことはしていないでしょう? ねえ、そうでしょう?」
「ああ、そうだ。カーナは悪くない」
ジークがなだめていた。
「それなのに何よ! 足手まといみたいな目で見て・・・。うっうっうっ・・・悲しい・・・」
今度は泣き出した。ジークは慌てて慰めに入った。
「カーナ。泣くな。せっかくの宴だ。楽しまなくちゃ。ブブカ族の皆が歓迎しているんだ」
「そうね。楽しまなくちゃ、悪いわ! もっと飲むわ! はっはっは!」
今度は大いに笑いだした。ジークはあきれてため息をついて、横にいるソミオに言った。
「カーナはあんなに酒癖が悪かったとはな」
「牢から出られてうれしかったのだろう」
「酒をあんなに飲んだからな」
「ここにいると絡まれるから。ちょっとよそに行くか」
2人がそっと席を立とうしたが、カーナに見つかった。
「おい、ソミオ!」
「は、はい」
「私が牢に入っているのに見ているだけで助けなかったな!」
「いや、それは・・・」
「それにジーク! お前も私を守れなかった。罰を与える。そこで踊れ!」
「いや・・・」
「いいから踊れ!」
仕方なくソミオとジークはブブカ族の踊りを見よう見まねで踊ってみた。だがうまく踊れるわけがない。するとブブカ族の子供がそばに来た。
「一緒に踊ってあげるよ」
「おお、そうか」
「こうやってね・・・」
その子供はソミオとジークに踊りを教えた。すると少しはましに踊れるようになった。そうなると何か楽しい。その様子にカーナも誘われて席を立って踊り始めた。
「この踊りは楽しいわ!」
それを見て他の運び屋も、そして術者も皆、踊り始めた。ブブカ族と一緒になって・・・。こうして皆が疲れて寝てしまうまで宴は続いていた。
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