ヨードル社長
首領カドルの住居は集落の中心にある。周囲よりひときわ大きな建物で、首領としての公的な施設も兼ねているようだ。ジャック隊長が訪れると、すぐに中に案内された。
「よく来た。まあ、座れ」
カドルに促されてジャック隊長は椅子に座った。
「我々キャラバン隊への疑いはまだ解けないのですか?」
「そうだ。我らは疑り深くなった。今回のことがあってから」
カドルは言った。ジャック隊長は一体、何があったのかが気になった。
「何があったのです?」
「カジコ開拓社が我らにこの森からの退去を迫ったのだ」
「どうして?」
「理由は分からない。ここは我らにとって故郷だ。信仰の対象でもある聖なるジョルジュ大木もある。とてもではないが明け渡すわけにはいかない」
カドルは強い口調でそう言った。
「断ったのでしょう。それでもしつこく?」
「ああ、きっぱりと拒否した。だが奴らは力ずくで我らを排除しようとした。メカニカという化け物でな。我らの先祖はユーラス王国と協定してこの地を安住の地としたのだ。それがこのようなことになっている。ユーラス王国は何もしようとしない。いやカジコ開拓社の背後にいるのかもしれない」
カドルはため息をついた。その時、外で「ドドドド・・・」という大きな音が鳴り響いていた。ジャック隊長が尋ねた。
「あれは?」
「奴らだ! メカニカに乗って来たんだ。我らを脅すために・・・。だが我らは負けぬ」
カドルは部屋を飛び出して行った。ジャック隊長のその後をついて行った。
集落の外には10台以上のメカニカが押し寄せていた。車輪のついた巨大な金属の塊であり、作業用の巨大なアームが2本備わっていた。それはカジコ開拓社のものだった。カドルはその前に出た。
「またお前たちか! この土地は渡さない!」
するとメカニカは止まり、その1台から太った中年男が降りてきた。彼が責任者のようだ。
「あんたも強情だな。せっかくいい条件を付けているのに」
「ヨードル社長! 言ったはずだ。ここは我らの土地。ここから動くつもりはない!」
「いつまでそんなことを言っていられるかな?」
ヨードル社長はニヤリと笑った。
「我らを脅す気か!」
「先住民のお前らなど踏み潰したところで誰も何も言わないだろう。ユーラス王国も黙認するだろうよ。さあ、どけ! どかないと踏み潰すぞ!」
ヨードル社長はメカニカに乗り込んだ。そしてまたすべてのメカニカを集落めがけて突っ込ませようとしていた。カドルは両手を広げたまま動こうとしない。メカニカは彼を踏み潰そうとしていた。その時、
「ドーン!」
大きな音がして先頭のメカニカが止まった。大きな衝撃を受けて止まってしまったようだ。それですべてのメカニカが停止した。その前にはジャック隊長がいた。
「これ以上、進むとあらば容赦しない」
ジャック隊長はマスターブレードの技でメカニカに衝撃を与えたのであった。
「誰だ! こんなことをするのは!」
ヨードル社長がメカニカの窓から顔を出して怒鳴った。
「ロマネスク王国のキャラバン隊、隊長のジャックだ! この集落を宿営地としている。もしこの地に踏み入るというのなら我らに対する攻撃とみなす!」
ジャック隊長はぐっとヨードル社長をにらみつけた。
「ロマネスク王国のキャラバン隊? ううむ・・・」
ヨ-ドル社長は予想もしていなかった相手を前に考え込んだ。このまま強行したらどんなことになるか・・・。
「わかった。今日のところは引き下がる」
ヨードル社長は悔しさをにじませていた。そしてカジコ開拓社のメカニカは引き上げて行った。
「やったぜ!」
「あいつら逃げて行った!」
それを見たブブカ族は歓声を上げた。メカニカを押し立てて強気に出たカジコ開拓社が尻尾を巻いて帰って行ったと・・・。
カドルはジャック隊長のそばに行ってその手を取った。
「ありがとう。助かった」
「これで俺たちはカジコ開拓者の仲間でないと信じてくれるな」
「もちろんだ。これまでの非礼を謝る。我らがキャラバン隊を歓待しよう」
カドルとジャック隊長はしっかりと握手した。
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