ブブカ族
【キャラバン日誌 ロマネスク歴2068.0122 隊長ジャック記録。我々はエーカーの森に入った。そこでこの地域の先住民であるブブカ族に遭遇した。キャラバン隊の2人が神聖な木であるジョルジュ大木に近づいたことで、彼らは我々がその木を倒しに来たと勘違いしているようだ。それでその誤解が解けるまで彼らの集落にとどまることになった。しかし彼らが敵意を持つカジコ開拓社とは一体ここで何をしているのであろうか・・・】
キャラバン隊は集落に迎えられた。一応、客としてだが、その宿舎となる家々には武装したブブカ族の男たちがついていた。
「いつになったら開放してくれるのか・・・」
ゲオルテ大使は嘆いていた。彼は親友のエドモン公爵と再会するのを心待ちにしていたからだ。ジャック隊長が言った
「大使。彼らの様子を見る限り、世間で言われているような凶悪な民族でもないようです。彼らには何か理由があってこんなことをしているのです。それも切羽詰まったことが・・・」
「だが奴らは今にも我らを襲いかかってくるような雰囲気だぞ。見張りの兵をつけて我々を監視している」
ゲオルテ大使は恐怖を感じていた。そこにルマンダが来た。彼女はこの集落を歩き回って興味深げに様々なものを見てきた。
「隊長。首領のカドルが話をしたいそうです。使いの者が来て伝えられました」
「そうか。ではすぐに行く。ところでルマンダ。何かわかったか?」
「この民族は昔ながらの方法で生きています。文明を受け入れようとしない。それが自分たちの先祖から受け継いだ素晴らしく人生を送るためとして」
「そうか。だからこの森で静かに暮らしていたんだな」
「はい。元々はこの国のあちこちに分散して住んでいたようです。しかし五代前の王がこの地域にユーラス王国を打ち立て、ブブカ族をこの森に追いやったようです」
ユーラス王国はいわば侵略者の立場にあった。だがそのことによる陰惨な闘いの記録はない。
「ユーラス王国の強大な武力を背景にそんなことをしたのか?」
「いえ、そうでもないようです。確かにユーラス王国は科学技術の進んだ国。メカニカと呼ばれる大型機械が発達しています。この点ではブブカ族とは対照的です。しかしブブカ族の戦闘力は侮りがたいのです。彼らが使う弓はかなりの破壊力を持ち、その剣は鋼鉄をも切り裂く。そして呪術を使い、自らの戦闘力をアップできるようです」
「ではブブカ族が弱いわけでもないのだな」
「はい。彼らは平和のため自発的にそうしたようです」
ルマンダの話ではブブカ族は弱くはなく、強力な戦闘力を持っている。だからユーラス王国は彼らに手を出さなかった。ブブカ族も争うよりもこの地で安楽に暮らす道を選んだ。それでこの国の平和が保たれていたのだ。
「それがおかしくなってきたわけか・・・。カドルの話を聞けばはっきりするかもしれない。ルマンダは引き続きこの地を調べてくれ。何か秘密があるのかもしれない」
◇
ソミオはカーナとジークに会うことができた。2人は牢に入れられていた。
「無事でよかったよ」
「一時はどうなるかと思った。なにせ、ブブカ族に囲まれたのだからな」
「でもキャラバン隊のここに来ることになってしまった」
「隊長は怒っていなかったか? こんなことになって・・・」
「さあね。でも雷の一つや二つは落ちるだろう」
ソミオとジークがそんな話をしているとカーナが口を出してきた。
「それより、いつ、ここを出してくれるのよ!」
「隊長さんがかけあってくれていますが・・・」
ソミオはそう言うしかなかった。ブブカ族にしてみたら2人は神聖な木に危害を加えそうに思えたのだろう。今だに牢から外に出すのに難色を示している。
「役に立たない人たちね。何とかしなさいよ!」
「すいません・・・」
ソミオは怒られている気分だった。カーナは言葉を続けた。
「あの方がいらっしゃれば、私を救い出して下さるかも・・・、いえ、きっと助けに来てくれるわ! ああ、ライティ様! ライティ様!」
カーナはライティを呼び続けていた。だがそんなに呼ばれてもこんなことでソミオが変身するわけにはいかない。
「もうしばらく待ってください。きっと牢から出られますから・・・」
ソミオはそう言うしかなかった。
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