ジークの策

 メガネズラーはまたキャラバン隊に突進してきた。ライティはその進路上の地面に着地して身構えた。これ以上、結界を壊させないと・・・。そして両者がぶつかった。「バーン!」と大きな音がして衝撃が辺りに響いた。するとライティがはね飛ばされた。それほどメガネズラーの突進力は強いのだ。

 地面にたたきつけられたライティをメガネズラーは容赦なく襲う。角で跳ね上げ、落ちてきたところをまた角で跳ね上げて地面に落とした。ダメージを受けたライティはなかなか起き上がれない。その上、今度はメガネズラーは大きな口を開けてライティの首にかみついた。


「グワッ!」


 ライティは悲鳴を上げていた。大きなダメージを受けて額の炎が揺らぎ始めた。このままではライティは消滅してしまう。ライティはメガネズラーの口を逃れようともがいていた。



 一方、宿営地ではジャック隊長や術者たちが結界の裂け目から侵入してきたオオラットーと戦っていた。だが数が増え、どうにもならなくなった。

 ジークもスキルの念動力でオオラットーを跳ね返していたが、これではいつまでもつかわからない。そのうちに彼はオオラットーに囲まれてしまった。


「こりゃ、まずいぜ!」


 逃げようとしてももう無理だった。前から襲いかかってくるオオラットーを念動力で押しやっていると後ろから別のオオラットーが飛びかかって来た。その牙がジークに迫る・・・。


「ギャン!」


 そのオオラットーは鳴き声を上げてそのまま地面に倒れた。その後ろにはルマンダが立っていた。彼女がジークを助けに来たのだ。


「一旦、退きましょう」

「それよりオイゲンを・・・オイゲンを何とかしてやりたい! オイゲンさえ元に戻ればオオラットーの襲撃は止むはずだ」


 ジークは言った。


「そう言えばソミオさんはオイゲンが野盗の服従魔法で操られていると言っていましたね。私の魔法で解除できるかも・・・」

「それならオイゲンのところに行こう。結界の裂け目から出ればいい。俺が援護する」

「しかし私の計算では五分五分というところです。私は金属の体ですから大丈夫ですが、あなたの身に危険が及びます」


 ジークはルマンダの言葉に首を横に振った。


「そんなこと気にしてねえ! このままでは俺ら全員がやられてしまう! さあ、行こう!」

「わかりました。私について来て下さい」


 ルマンダは結界の裂け目に向かった。そこは人一人が通れるほどの穴が開いていた。ルマンダは、侵入しようとするオオラットーを排除しながらその穴から外に出た。その後にジークが続いた。

 オイゲンと野盗たちは結界のすぐ前に来ていた。お頭のズルカは結界の中の死闘を笑って見ていた。そこにルマンダとジークが駆け寄った。ズルカは2人を見て大声を上げた。


「なんだ! お前たちは!」


 ジークは指さしながら言った。


「オイゲンを返してもらう!」

「キャラバン隊の奴らだな! やっちまえ!」


 野盗たちが2人に襲い掛かって来た。だがルマンダが叩きのめし、ジークが念動力で跳ね飛ばしていった。とてもズルカたち野盗が敵う相手ではない。


「くそ! 逃げろ!」


 ズルカたちは逃げて行った。だが数匹のオオラットーがルマンダとジークを追ってきて2人を襲おうとしていた。ジークはルマンダに言った。


「ここは俺に任せてください。オイゲンを・・・」

「わかったわ。しばらく時間を稼いでください」


 ジークはうなずくと近づくオオラットーの前に立ちはだかった。


「これでもくらえ!」


 念動力でオオラットーをはね返していく。だが数匹を相手では手に余る。隙を突かれてオオラットーの体当たりを受けて倒された。そこに鋭い牙が迫る・・・。


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