結界
ソミオは宿営地に帰るとジャック隊長のテントに声をかけた。
「大変です! オオラットーの大群が向かって来ています!」
するとすぐにジャック隊長が出てきた。
「本当か!」
「ええ。オイゲンが操られてオオラットーの群れを引き連れてこちらに向かっています!」
「それは大変だ。ルマンダはいるか!」
「はい。ここに」
ルマンダはすでにそばに来ていた。
「リーナとジュールに結界を張らせろ! 他の術者は宿営地の前で警戒。オオラットーの侵入を許すな!」
「はい」
宿営地は騒然となった。だがソミオがすぐに通報してジャック隊長がすぐに手を打ったため、オオラットーの大群が来る前に宿営地に結界を張ることができた。
「結界は完了! オオラットーならいくら来ても防げるわ!」
リーナが報告した。それにジャック隊長は大きくうなずいた。
「うむ。あとは見ているだけだ。だがこんなことを仕掛けてくるのは・・・」
それはあの野盗の仕業とは思えなかった。このキャラバン隊を狙う敵がこの手で襲ってきたと思わざるを得ない。
やがてオオラットーの群れが見えた。その奥にはうつろな目をしたオイゲンと野盗の姿が見えた。
「オイゲン! やめろ! やめるんだ!」
ジークたちが大声で叫ぶが、服従魔法にかかったオイゲンの耳には届かない。
やがてオオラットーは結界の前まで来た。その数は・・・数え切れないほどだった。ズルカはオイゲンに命じた。
「さあ、オオラットーたちに攻撃させろ!」
「○!◇#△!※□!」
オイゲンの言葉にオオラットーは結界に取り付いてかじり始めた。だがリーナとジュールがしっかりと張った結界である。多くの数のオオラットーが取り付いたところで破れるわけはなかった。
「まだか! まだ破れないのか!」
それを見てズルカは焦り始めた。この結界を破らない限り、キャラバン隊に被害を与えることはできない。
「苦労しているようだな?」
声をかけてきたのはブロンだった。
「あっ! これはブロン様! 結界が壊れなくて・・・」
「そんなことだと思っていた。手伝ってやろう!」
ブロンは前に出た。そして呪文を唱えた。
「・・・・召喚! メガネズラー!」
一陣の風が巻き起こり、つむじ風となってブロンを包んだ。そして竜巻のように大きくなってその中でピカッと光った。するとその竜巻は消えてその後に巨大な召喚獣が現れた。長い顔に鋭い牙や角がのび、黒く硬い毛に覆われた体に鋭い爪の手と足が生え、尻尾は長くムチ状になっていた。
それが結界に向かって突進してきた。
「バリッ! バリッ!」
結界がきしむ音がする。さすがに召喚獣の体当たり攻撃にはこの結界はもちそうにない。
「術者は前へ! 結界が壊されたらオオラットーが襲ってくるぞ!」
ジャック隊長が声を上げると、メレが矢をつがえ、ダルレが投げ槍を構えた。その後ろでトロイカとテームズが剣を抜いた。また運び屋たちもそのスキルでオオラットーと戦おうとしていた。
リーナとジュールは結界を何とか維持していたが、何回目かの召喚獣メガネズラーの突進で結界にひびが入った。2人はそれを何とか修復しようとしたが、そのまえにメガネズラーの体当たりを受けて結界に穴が開いてしまった。そこからオオラットーが侵入してきた。
メレが矢を放ち、ダルレが投げ槍を放った。それで最初の数匹は倒したが、その後からもオオラットーが次々に結界の中に入って来た。トロイカとテームズが剣を振るってなんとか撃退する。
メガネズラーはさらに穴を大きくするため、次の突進のために後ろに下がった。またあの攻撃を受ければ結界が崩壊するかもしれない。そうなればもう防ぐ手立てがないだろう。
ソミオは人目のつかないところに隠れた。そして首飾りを右手で引きちぎって上に掲げた。
「ライティ!」
するとソミオの姿が光りに包まれて消えて、空中にライティを出現させた。
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