処分
【キャラバン日誌 ロマネスク歴2068.0118 隊長ジャック記録。昨日、キャラバン隊は野盗に荷物を盗まれそうになった。それを阻止したのはトロイカ、ジーク、ソミオ、ハンカだった。おかげで被害は免れた。だがその野盗を手引きした者がこのキャラバン隊にいた。彼をどう処罰すべきか・・・】
ジャック隊長の前でオイゲンはうなだれていた。彼が聞いても何も答えようとしない。そばについていたジークが言った。
「オイゲンは反省しています。気が小さくて悪いことができる男ではありません。隊長さん。どうかオイゲンを許してやってください」
ジャック隊長はため息をついてじっとオイゲンを見つめた。
(確かに悪いことができる男ではない。しかし野盗に加担したことは確かだ。それにそのことについて何も語ろうとしない)
だがジャック隊長はキャラバン隊からオイゲンを外すことに躊躇していた。彼がいなくてはラクダの統制ができないからだ。
「わかった。処分は保留する。その代わり、ジーク。オイゲンから目を離すな」
「ありがとうございます! よかったな。オイゲン! お前も御礼を申し上げろ!」
ジークはオイゲンの肩をパーンと叩いた。オイゲンはぎこちなく頭を下げた。そして2人は隊長のテントを出て行った。
ジャック隊長は腕組みをしていた。横にいてすべてを聞いていたルマンダが言った。
「隊長。処分が甘すぎるのでは・・・。私の計算では・・・」
「いや、いい。俺もそう思っている。だがオイゲンは必要だ。そんなことをするのは何かわけがあるに違いない。なんとかそれが聞けたらいいと思ったが・・・」
ジャック隊長はまたため息をついた。
◇
ズルカたち野盗はアジトに戻った。事らの手の内を相手に見透かれていたようであった。
「くそっ! うまくいくと思ったのに・・・」
ズルカは地団太踏んでいた。そこにまたあの男が来た。
「失敗したようだな?」
それはブロンだった。ズルカたちは慌ててひざまずいた。
「ブロン様。お許しを・・・。次こそは必ず・・・」
「オベール様はそんな悠長に待ってくだされぬ」
「そ、そんな・・・。それでは我々は生きていけませぬ」
ズルカは絶望的な顔をしていた。
「まあ、待て。見捨てようというわけではない。俺が手を貸してやろう。」
「ブロン様が?」
「ああ、そうだ。それに潜り込ませた密偵の情報では奴は得意なスキルを持っている。それで一気にキャラバン隊を撃滅させる」
「それはどのようにして?」
「作戦はな・・・」
ブロンはズルカたちにキャラバン隊襲撃の作戦を教えた。
「なるほど。これならいけます。成功間違いなしです」
「そうだろう。これでお前たちもネクロマンサーの一員になれる。期待しているぞ」
ブロンはそう言ってその場から姿を消した。
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