第13話 消したい過去を持つ男
キュアの町
キャラバン隊はキュアの町を目指していた。そこはラオンの町の近くで、1日で到着できそうだった。キャラバン隊はいつもと同じようにきちんと一列になって進んでいる。それはいつしか当たり前のようになっていた。それはオイゲンの力だった。もしオイゲンがいなかったら・・・気まぐれなラクダが自由に歩き回って、砂漠を進むキャラバン隊の行進は難渋しているものとなっているだろう。動物と意思を通い合わせる彼はラクダを思うがままに進ませられるのだ。
今日もオイゲンがラクダに話しかけている。そこにジークが声をかけた。
「そういえばオイゲンはこの辺の出身だったんじゃないか?」
「えっ? おら、そんなこと言ったっけ・・・」
「この間、酒を飲んだ時、言ったぜ」
「おら、知らねえ・・・」
オイゲンはそう言うと逃げるようにその場を離れた。その様子を見ていたソミオがジークに尋ねた。
「どうかしたのか?」
「いや、なんでもない。オイゲンがここの出だとか言っただけだけどな」
「そうだったのか? そういえばオイゲンは昔のことは話したがらなかったような気がする」
「そうなんだ。俺もオイゲンの昔のことはよく知らない。だがこの間、酒を飲んだ時、確かにキュアの町のことを懐かしそうに話した」
「そうなんだ」
「でもさっきは強く否定したんだ」
「おかしいな。どうしてだろう」
ソミオは首をひねった。
「オイゲンの奴、この町で何かしでかしたかもしれないな。俺たちに知られたくないのだろう」
ジークはそう言った。知られたくないことは誰にでもある。この僕だって・・・ソミオはそう思った。
「まあ、思い出したくないことがあるのかも・・・」
「そうだな。誰だって触れられたくないことがあるよな」
ジークとソミオはそれ以上、気に留めなかった。
やがてキャラバン隊はキュアの町に入った。そこでジークはオイゲンのことが少し気になり、ちらっとその様子を見た。
(どうしたんだ?)
オイゲンは顔を隠すかのようにうつむいて歩いていた。しかも元気がなく、いつもと違う様子だった。引いているラクダでさえも気になっているようにオイゲンに顔を向けていた。
心配したジークが声をかけた。
「おい、オイゲン。どうしたんだ? 体でも悪いのか?」
「いや、おら・・・なんでもないだ・・・」
オイゲンからはそう返ってくるだけだった。
町の通りには到着したキャラバン隊を一目見ようと町の者が押し寄せていた。
「よく来なすった!」
「遠いところをようこそ!」
久しぶりに見るキャラバン隊に歓声を上げて出迎えていた。だがその奥から冷ややかな目でその行列を見ている者があった。だがそこにオイゲンの姿を見てきらりと目が光った。
「あいつが・・・あいつがキャラバン隊に加わっているのか・・・これは面白いことになった。」
その男は無精ひげを撫でてニヤリと笑った。
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