前途多難

【キャラバン日誌 ロマネスク歴2068.0114 隊長ジャック記録。ラオンの町が再びゴーレムに襲われ、またライティが現れて戦ってくれた。しかし倒しても次々に現れるゴーレムにライティは苦戦していた。このゴーレムたちは敵の男が作り出し操っていたのだ。この男は子爵令嬢カーナの協力でダルレが投げ槍で倒した。それにより町とライティの危機が救われた。今回はダルレの功績が大である・・・】


 ジャック隊長はその日誌をダルレの前で読んだ。


「この日誌はロマネスク王国に帰った時、賞罰の査定に使われる。この手柄でお前には褒賞がつかわされるだろう」

「それはありがてぇ。隊長さん、感謝するぜ」


 ダルレはうれしそうに頭を下げて部屋を出ていった。入れ替わりにルマンダが入って来た。


「隊長。そろそろ出発できます」

「そうか。それはよかった。バード子爵が協力しておかげだな」

「ええ、そうです。しかしその代わりとはいっても、あれは・・・」

「いや、いいんだ。そうでもしないと何をしでかすかわからないからな」


 ジャック隊長は笑った後、ひとつため息をついた。



 キャラバン隊は出発の準備が整っていた。ラクダの隊列が並び、術者や運び屋たちが整列した。そこにはカーナがいた。ジークが不思議に思って尋ねた。


「お嬢さん。どうしてここにいるんです? 我々はもう出発するんです」

「カーナと呼んで。私も今日からキャラバン隊の一員なのよ」

「ええー!」


 そこにいたジークたち運び屋は声を上げて驚いた。


「どうして?」

「ライティ様のそばにいるためよ。ここにいたらまたお会いできるもの。パパに言って隊長さんに頼んでもらったの。ほっほっほ・・・」


 カーナは腰に手を当てて笑っていた。ソミオが首を横に振りながら言った。


「でも危険ですよ。敵に狙われているのですから」

「そんなこと、関係ないわ! でもいざとなったら私を守るのよ!」


 カーナの言葉にソミオはため息をついた。今度はどんな無茶をするのか・・・。


「それからあなたにはこれをあげるわ!」


 カーナはソミオに絹の首巻を差し出した。


「これを僕に?」

「ええ、そうよ。でも勘違いしないで。この間、助けてもらったお礼じゃないのよ。いらなくなったからあげるのよ」


 カーナはなかなか受け取らないソミオに押し付けるようにその首巻を渡した。


「ありがとう。大切にするよ」


 ソミオは笑顔でそう言った。その言葉にカーナは頬を赤くしていた。


「有難く使いなさいよ。せっかく私があげたんだから・・・」


 そう言ってカーナはそこから逃げるように隊列の前に行った。横にいたジークが冷やかすようにソミオに行った。


「ソミオ。よかったな。もしかしてあの娘、お前に気があるんじゃないか?」

「やめてくれよ。大変だったんだから」


 そう言うソミオだったが、もらった首巻を大事に懐にしまった。


 いよいよ出発だった。ジャック隊長が先頭のラクダにまたがり、


「出発!」


 と声を上げた。だがその前方にカーナがラクダを進ませた。そして振り返ると、


「さあ、私についてきて! 行くわよ!」


 と声をかけた。それでキャラバン隊は行進を始めた。

 ジャック隊長はルマンダと顔を見合わせて両腕を広げた。先々が思いやられると・・・。

 こうしてカーナを加えてキャラバン隊は次の目的地、キュアの町に向かっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る