塔の上の男

 その光景を見ていたカーナもライティの危機がわかった。そして次々に現れるゴーレムを見て思った。


「この近くにゴーレムを作り出す黒魔術師がいるのだわ。それを倒さないとこの戦いは終わらない。ライティ様がやられてしまう・・・」


 彼女は辺りを走り回ってそれらしい人物がいないかを必死に探した。すると高い塔の上に戦いをじっと見ている男を発見した。


「あの男だわ! ゴーレムを作り出しているのは!」


 だがカーナにはどうにもできない。


「そうだ! キャラバン隊の術者の方が近くにいるはず。その方に頼めばいいんだわ!」


 するとちょうど彼女の近くにダルレがいた。彼はゴーレムに必殺の槍をお見舞いしようとしていたが、次々に現れるゴーレムになす術がなく、ただ見守るしかなかったのだ。


「ちょっと! キャラバン隊の術者の方ですよね?」

「ああ、そうだが。ここは危ないぜ。すぐにずらかった方がいいぜ!」


 ダルレはカーナがただ逃げ遅れた町の者だと思った。


「すぐ来てください。ゴーレムを操る者を見たんです!」

「何だと! そいつはどこだ!」

「あそこです。あの塔の上です!」


 カーナは指さした。ダルレはそこに黒づくめの男を見た。



 ライティは現れたゴーレムになす術はなかった。エネルギーが少なくなり、「クラッシュストライク」や「エネルギーソード」も使えない。打撃技で戦うしかないが、ゴーレムにはあまり効果がない。それにゴーレムは3体。額の炎が小さくなり、エネルギー切れまでの時間が近づいている。

 3体のゴーレムがライティに一斉に襲い掛かって来た。ライティはキックやパンチを放つが、すべてゴーレムの土の体が吸収してしまった。いや、それどころか、ライティは体や四肢をがっちりつかまれてしまった。ゴーレムはその怪力でライティの体をつぶして引きちぎろうとしていた。


「ドワアッー!」


 ライティは苦痛の声を上げていた。



 塔の上に怪しい男が確かにいた。ダルレにはその男が両手をゆるやかに動かしており、ゴーレムを操っているように見えた。


「間違いない! 奴だ!」


 ダルレは投げ槍を構え、狙いをつけた。距離は遠いが届かぬこともない。後は風の流れだけ・・・彼はタイミングを計っていた。そして槍を投げつけた。



 一方、塔の上のバークは勝利を確信していた。目の前でゴーレムがライティを締め上げている。もはやライティは抵抗する力もなくなっているようだ。


「もう一息だ。もう少しで巨人は完全に力を失う。ふふふ」


 彼は不気味に笑っていた。

 だが急に風を切る音が聞こえた。


「何だ!」


 バークがその方向を見ると、投げ槍がまっすぐ向かってきていた。もう避けることもできない。


「ぐあっ!」


 投げ槍がバークを貫き、彼は声を上げた。


「こ、こんなはずでは・・・」


 それがバークの最期の言葉だった。彼はそのまま塔から落下して地面に叩きつけられた。その体は炎に包まれそのまま灰になって消えていった。

 するとライティを押さえつけていたゴーレムたちの体がボロボロと崩れ、土に戻った。解放されたライティは立ち上がった。彼の足元には3つの土塊が残っているだけだった。ライティはそれを確認すると飛び上がり、上空でその姿を消した。

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