町はずれの迎撃

 砂漠の下で何かがうごめきように振動していた。それがやがて大きく盛り上がった。そして砂塵が大きく巻き上がり、砂の中からゴーレムが姿を現した。その巨大な体を震わせて


「グオッ!」


 と咆哮すると、大きな足を一歩一歩踏み出して進んで行った。その方向にはラオンの町がある。またキャラバン隊もろとも町を破壊尽くしようというのだ。

 ジャック隊長たちが的のはずれに到着した。ここで食い止めなければ町にまた大きな被害が出る。


「行くぞ! 戦闘態勢で散開! ゴーレムを町に入れるな!」


 ジャック隊長が叫んだ。すると彼を中心にトロイカとテームズの剣士が並び、その横に弓矢のメレ、投げ槍のダルレが側面援護に回った。そしてその後方に魔法使いのリーナと魔導士のジュールが陣取った。彼らが遠隔攻撃を担当する。

 ゴーレムがジャック隊長たち術者に近づいてきた。彼らは緊張の面持ちで攻撃開始を待っている。頃合いを見てジャック隊長が後ろに声をかけた。


「魔法攻撃開始!」


 するとまずはリーナの魔法が放たれた。


「サンダー!」


 稲妻がゴーレムを直撃するがびくともしない。同時にジュールが、


「ホーリーナイト!」


 を発動してゴーレムの頭上から光の輪を下ろすが、浄化の力もゴーレムには効かなかった。ゴーレムはさらに町に接近してくる。ジャック隊長が横にいるメレとダルレに声をかけた。


「矢と槍を!」


 その合図でメレが矢を放ち、ダルレが投げ槍を次々に放った。だがそれもゴーレムに突き刺さるだけで足を止めることができない。何もなかったかのように平然として進んでくる。後は剣士たちの技に賭けるしかなかった。

 トロイカが剣を抜いて技を放った。


「ナイトブレード!」


 同時にテームズが細剣で突きを繰り出した。


「ファーストランジ!」


 そして最後にジャック隊長が必殺技を繰り出した。


「ナイン オブ ナイツ!」


 ゴーレムに大きな刃が降りかかり、それに剣の気が突き刺さる。そして九人の騎士の突進がゴーレムを襲った。それらはゴーレムの体を切り裂き、穴をあけた。だが元々が土の塊だから大きなダメージにはならない。

 さらに一斉攻撃を何度も行ったが、結果は同じだった。土でできたゴーレムを倒すどころか、ダメージを与えることすらできない。

 ゴーレムはそれらの攻撃を受けながらも町に入ろうとしていた。そして目障りなジャック隊長たちを踏み潰そうとしてきた。このままでは術者たちは全滅する・・・。


「一旦、退避だ。下がって態勢を整える!」


 ジャック隊長はそう大声を上げた。その指示で術者たちは慌てて後退して、その場から離れた。するとゴーレムは彼らを追うこともなく、すぐに町に侵入した。そして大きな腕を振るって、あちらこちらを破壊して回っていった。


「くそっ! 町に入られたか! ならば皆で波状攻撃をかける。続け!」


 ジャック隊長は術者たちを集めて、再びゴーレムに挑もうとしていた。

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