ゴーレム襲撃

 ラオンの町を襲ったのは秘密結社ネクロマンサーのオベールの配下のバークだった。彼はこの町でキャラバン隊を待ち受けていた。彼はラオンの町の外から様子をうかがっていた。


「みな、やられてしまったか・・・無理もない。あの巨人がついているのだからな。しかし・・・」


 ライティはゴーレムに撃退されてしまった。彼はそれでライティの力を知り、簡単には倒せないことを悟った。だが手がないわけでもない。彼は胸元にしまっていた容器を取り出した。それを開けると中には丸薬が一つ入っていた。これはオベールから与えられたものだった。


「これは俺の命を魔法力に変える薬だ。これさえあれば・・・」


 バークはその丸薬を飲み込んだ。激しい痛みが体中を巡り、全身から血を吹きだして倒れた。だがしばらくして立ち上がった。彼の魔法力は自らの命と引き換えにいくらでも増大させることができるようになったのだ。


「あの巨人を倒す! あの巨人さえいなければキャラバン隊の壊滅など、赤子の手を捻るのも同然だ。ふふふ・・・」


 バークは不気味に笑った。ラオンの町はまた襲われる・・・。


 ◇


 ラオンの町のはずれに大きな砂煙が立った。それはゴーレムが現れる前兆なのだ。それをいち早く感じた運び屋のワンズがジャック隊長に伝えた。ワンズには害意ある敵を探知するスキルがある。


「隊長。また現れましたぜ。多分ゴーレムの召喚獣でしょう。向こうの町はずれの方です」

「そうか。ルマンダ。町に警報を出せ。運び屋たちに避難する人を誘導させるんだ。私は術者を連れて迎撃する」


 ジャック隊長はルマンダに指示を与え、術者たちを連れて飛び出した。また町に入れると大きな被害が出る。


 ◇


 ゴーレムがまた襲撃してくるという情報はすぐに町中に広がった。町の人たちはすぐに荷物をまとめ、大慌てで町の中心部に避難した。それで道は人々であふれ、飛び交う怒涛で騒然としていた。

 だがその人の流れと逆に進む者があった。それはカーナだった。


「きっとあの方が現れる・・・」


 彼女はライティと再び会うために、無謀にもゴーレムにいる場所に向かっていたのだ。


 一方、町の中心部にある寺院の一時避難所には多くの人たちが詰めかけていた。その中にはバード子爵もいた。彼はゴーレムが出現したと聞いて家族とともにここに逃げてきた。だが一人娘のカーナだけがはぐれてしまっていた。


「カーナ! カーナ!」


 バード子爵は何度も大声で呼んでいた。だが彼女は町はずれに向かっており、ここにはいない。そこにジークとソミオが通りかかった。


「ちょっと君たち! カーナを見なかったか?」


 バード子爵が尋ねた。


「いえ、見ていませんが・・・」

「いないんだ。いっしょに来たつもりだったがどこにもいないんだ」


 バード子爵は心配のあまり、青ざめていた。それを聞いてジークとソミオは顔を見合わせた。もしかしたら彼女はライティと会うために危険な場所に行ったのではないかと・・・。


「僕が探してきます!」


 ソミオが飛び出して行った。


「君。どこに行くんだ!」


 バード子爵が呼び止めようとしたがソミオはそのまま行ってしまった。それなら私も・・・とバード子爵もその後を追いかけようとしたが、それをジークが止めた。


「危険です。止めた方がいいですよ」

「しかし、カーナが・・・」

「ソミオに任せておけば大丈夫です。奴は何か不思議な力がある。きっとお嬢さんを連れて戻ってきますよ。それよりも中に・・・」


 ジークは後ろ髪ひかれるバード子爵を避難所に案内した。

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