一目ぼれ
建物は崩壊寸前になり、その屋根は吹き飛び、3階はむき出しになっていた。その衝撃で足は抜けたものの、カーナは部屋をのぞいたゴーレムと目が合ってしまった。ゴーレムは獲物を見つけたとばかりにその邪悪な目が光った。彼女は怖くてもう動くこともできない。ゴーレムは彼女を握りつぶさんと右手を伸ばした。
「きゃあ!」
カーナが叫び声を上げた。その時、ライティが上空から降りてきてゴーレムをキックで吹っ飛ばした。その衝撃で辺りが震え、砂煙が舞った。
ライティは地面に着地すると、むき出しになった3階にいるカーナを優しく両手ですくい、ゆっくりと地面に下ろした。
「あ、ありがとう・・・」
初めて見た巨人にカーナは驚きながらも、その優しい心遣いにうっとりした気持ちになっていた。
ライティはゴーレムに向かっていった。強力なキックやパンチを繰り出すも、土の塊であるゴーレムにはその体にめり込むだけで大きなダメージを与えることはできなかった。そのうちライティはその体をつかまれて両腕で圧迫されていった。ゴーレムに怪力にライティは押しつぶされそうになっていた。
「ジュワッ・・・・!」
ライティは苦しげな声を上げ、その額の炎が揺らぎ始めた。このままではライティは消滅してしまう・・・。
この状態を打開しようとライティは体に力を込めた。するとその体がまぶしく光った。
「エネルギーフラッシュ!」
ライティは思い切って全身のエネルギーを放出させた。それをまともに受けたゴーレムは大きなダメージを受けて、ライティを放して後ろにひっくり返った。その焦げた体からは煙が出ている。ゴーレムはこれはもう戦えないとばかりに背を向けて逃げていった。
ライティは追いかけようとしたが、それはできなかった。かなりのエネルギーを消耗してしまっていたからだ。ゴーレムが砂漠の砂の中に消えていくのをただ見ているしかなかった。
町はようやく静けさを取り戻した。ライティはゆっくりと上を向き、上空に飛んでいって、その姿を消していった。
その様子をカーナは胸に手を当てて見ていた。そこにソミオが現れた。
「大丈夫ですか?」
「ええ・・・」
カーナはまだぼうっとして空を見ていた。
「ここは建物が崩れるかもしれないから危ないですよ。向こうに行きましょう」
ソミオがそう言ったがカーナは聞いていなかった。まだ空を見上げている。
「お父様が心配しておられました。行きましょう」
ソミオが無理にでも手を引いていこうとすると、カーナはその手を振り払った。
「うるさいわね。私があの人のことを思っているというのに・・・」
「あの人?」
「ええ、私を助けてくれた巨人」
「ライティですか?」
「ライティって言うの? そう。あの方が私の王子様」
カーナはうっとりとまだライティが消えていった空を眺めていた。その後ろでソミオはやれやれと言うふうに肩をすくめていた。
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