新たな仲間

 戦いは終わった。狼人に咬まれた者たちは秘薬によって回復していた。だがそこにソミオの姿はなかった。オルトロスの襲撃時に宿営地から逃げられなかったのかもしれない。だがもしかしてそこに隠れて難を逃れているのではないか・・・ジークは踏み荒らされた宿営地を必死に探した。しかしいくら探してもソミオが見つからなかった。

 ジークは絶望感に襲われていた。ソミオはやられてしまったのではないかと。だがそれを受け入れられないジークは空を仰いで、


「ソミオ! ソミオ! どこにいる!」


 ジークは叫んだ。もしかしたらソミオが答えてくれるのではないかと・・・。

 その心が通じたのかもしれない。遠くで、


「おーい!」


 という聞き覚えのある声が聞こえてきた。ジークが半信半疑でその方向を見ると、ソミオが元気よく駆けてきていたのだ。ジークはうれしさで飛び上がってソミオを迎えに行った。


「ソミオ! また心配かけやがって!」

「ごめんよ。またライティに助けられたのさ。」

「それはよかった! よかった!」


 ジークは力いっぱいソミオを抱きしめていた。



 ジャック隊長はロイアンの遺体のそばにひざまずき、その手を合わせた。その光景を見た他の者もジャック隊長に倣って手を合わせてロイアンのために祈った。狼人と化した彼が宿営地を襲ったのだが、彼もまた狼人の呪いの被害者だったからだ。それにロイアンにはともに旅をした多くの思い出がある・・・。


「ロイアン。今までありがとう。お前のことは忘れない・・・」


 ジャック隊長はそう言葉をかけていた。


【キャラバン日誌 ロマネスク歴2068,0108 隊長ジャック記録。再び宿営地にオルトロスが襲ってきた。だがまたライティが現れ、我々と協力してオルトロスを倒した。宿営地は踏み荒らされ、テントや荷物に大きな被害が出た。それにロイアンが犠牲になった。彼は最後まで勇敢に戦った。キャラバン隊のために殉職したのだ・・・】


 ジャック隊長はキャラバン日誌にはこう記した。ロイアンの名誉を守るために・・・

 そしてこうも記した。


【・・・ようやく秘薬が届き、狼人に咬まれた者たちは回復した。その秘薬は運び屋のハンカの兄、ローグが渡してくれたのだ。彼は狼人の呪いの後遺症に苦しみ、村人から迫害を受けていた。だがそれにもかかわらず彼は狼人の村への襲撃時には戦って村を守った。彼が村人に受け入れられる日が来ることを信じてやまない・・・】


 ジャック隊長はハンカから兄のローグの話を聞いたのだ。その行動に敬服し、頭が下がる思いだった。


(立派な人だ。必ず頑迷な村人たちの心を動かすはずだ。そう信じたい・・・)


 彼はそう思いながらローグのために祈った。



 いよいよキャラバン隊は態勢を整えてタランの森を出発して、ラオンの町に向かうことになった。ジャック隊長がテームズに言った。


「どうだ? 我々とともに来ないか? 我々には君が必要なんだ!」


 その申し出にテームズは少し考えて返事した。


「私は森の番人です。狼人から旅人を守る使命がある」


 そうは言ったものの、テームズは言葉を続けた。


「しかし狼人の根は絶たれたようだ。ここでの私の使命は終わった。私をキャラバン隊にぜひお加えください」


 テームズは頭を下げた。その言葉にジャック隊長をはじめ、ルマンダたちも大いに喜んだ。


「それはよかった。今日から、いや、ずっと我々は仲間だ! よろしく頼む!」


 ジャック隊長とテームズは固く握手した。こうしてテームズはキャラバン隊に加わることになった。新たな仲間を加えてキャラバン隊はまた苦難の旅に向かうことになった。

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