モリードの拘束魔法
宿営地の前ではジャック隊長たち術者とゾンビの男たちとの間で激しい戦いが繰り広げられていた。そこに急にモリードが姿を現した。
「モリードさん。一体・・・」
リーナが驚いて声をかけたが、モリードは答えようとしない。ただじっと辺りを見据えて、両腕を広げた。すると襲っていたゾンビの男たちは急に何かに引っ張られるかのように1か所に吸い寄せられるように集まった。そして次にモリードが腕を合わせると、男たちはまるで磁石のように体をくっつけて固まった。
「これでもう動けまい」
モリードは腕を下ろした。その彼のもとにジャック隊長が駆け寄った。あの不思議な術を見る限り、彼はただ者ではないと感じていた。
「助けていただいたようです。礼を言う。私はこのキャラバン隊の隊長のジャックです。あなたは?」
「私はこの町のはずれに住むモリードという者です」
モリードは厳しい顔から一転して穏やかな表情になって会釈した。そこにリーナもそばに来た。
「隊長。この方にかくまっていただいたのです」
「そうでしたか。ところであなたは・・・」
ジャック隊長がそう言いかけた時、獣が唸るような大きな声が響いた。新たな召喚獣が黒い影となって現れたのだ。
それはあのジュローの変身した姿だった。ゾンビの男たちを操っていたジュローは、全員がモリードの不思議な術で戦闘不能になっているのに目を剥いた。
「皆、やられてしまったか! ならば俺が!」
と呪文を唱えて召喚獣となった。それはヘルゾンビだった。不気味なほど真っ黒で2つの目だけがギラギラ光り、その巨大な体を引きずるように動かしていた。ヘルゾンビはキャラバン隊の宿営地を襲おうとその方向にゆっくり進んでいた。
ヘルゾンビの動きを止めねばならない。ジャック隊長は大きく振りかぶって剣を向けると、
「ナイツ オブ ナイン!」
の必殺技を出した。空中に9人の槍を持った騎士が現れ、次々に突進していく。ヘルゾンビはそのたびに深い傷を負ったが、それは残ることなくすぐに癒えた。ヘルゾンビにも不死の魔法がかかっているのだ。
それを見たモリードはまた前に出て大きく腕を開いた。彼の魔力でヘルゾンビも抑え込もうとしたのだ。
「ウグググ・・・」
ヘルゾンビはうなり声を上げ、急に動きを止めた。そしてその体と腕が縛られるかのように縮こまった。これでヘルゾンビを抑え込めると思われたが・・・。
ヘルゾンビは逃れようと抵抗して暴れていた。モリードは額に汗を浮かべながら必死に魔法を放っていた。両者の力が均衡したまま、しばらく時間が流れた。
だが次第にモリードの方に疲れが見え始めた。ヘルゾンビは、
「グオッー」
と叫び声を上げるとその魔法の拘束を弾き飛ばした。ヘルゾンビがモリードの拘束魔法を打ち破ったのだった。モリードは破られた魔法の反動で後ろに吹っ飛んだ。
その彼が地面に叩きつけられる前にジークが念動力で受け止めた。それでモリードは大きな傷を負わないでいたが、彼はこうつぶやくしかなかった。
「もうあれを止める手段はない・・・。人知を超えたあの力に・・・」
ヘルゾンビはそのまま宿営地に向かった。ジャック隊長たちが攻撃を仕掛けるが、もはやどうにもならない。恐ろしく不気味な笑いを浮かべながら無防備な運び屋たちがいる場所に迫ってくるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます