宿営地攻撃
ジュローは訝しげに辺りを見渡した。
(ルマンダが急に消えただと!)
こんなことがあり得るはずがないと・・・だがルマンダの姿がないのは確かだった。ジュロー配下のゾンビの男たちは獲物を失い、そこらをうろうろしていた。
「こうなったら奴らの宿営地を急襲してやる。戦ってみたが奴らには我らを止める手段はないようだ。これならキャラバン隊を破滅させられるだろう」
ジュローはニヤリと笑って男たちに指示した。そうしてゾンビの男たちは宿営地に向かっていったのである。町中に入ると異様な集団に、人々は悲鳴を上げて逃げ惑った。それで混乱があちこちに波及し、町中が騒然としていた。
このことは宿営地でも気づかれていた。すでに警戒のために街にロイアンをやって、術者や運び屋を宿営地に帰還させた。ゲオルテ大使だけはかなり酔っていて、
「いやじゃあ! せっかく飲に来て羽を伸ばしておるのに!」
とわめいて暴れていたが、ロイアンは「急ぐのでご免!」と当て身をして気絶させ、皆で担いで連れ帰った。
その中でこの騒ぎであった。
「やはり敵の流した偽情報であったか。ホワイエの捜索に出した者が戻ってきていないが、街に繰り出したものはすべて帰って来た。これで襲ってきても迎撃できる」
ジャック隊長は術者たちに指示を出した。
「敵が宿営地に向かってきているようだ。宿営地の前で迎え撃つ。皆、準備しろ!」
「はっ!」
集まったのはジャック隊長の他、剣士のトロイカとロイアン、弓使いのメレ、槍使いのダルレ、そして魔導士のジュールは魔法の援護のために後方で待機させた。
すると異様な姿で動きのおかしい男たちの集団がゆっくりと近づいてきた。
「何だ?」
ジャック隊長は首をひねった。どう見ても大きく傷ついた者たちである。どうしてそんな者たちが無謀にも宿営地を襲おうというのか・・・。
ジャック隊長は後方のジュールに指示した。
「ジュール! ホーリーナイトだ! 奴らを一網打尽に倒せ!」
「わかりました。」
ジュールは呪文を唱え大きくて腕を広げた。
「ホーリーナイト!」
すると巨大な光の輪が男たちの上に下りてきた。その光の浄化作用で倒そうというのだ。男たちは苦しみ、そして倒れた。
「やったか!」
ジャック隊長はそう叫んだが、すぐに顔色を一変させた。やられて倒れたはずの男たちが立ち上がったのである。そして何事もなかったかのようにジャック隊長たちの方に向かってきた。
(これは、もしかしたら・・・)
ジャック隊長は嫌な予感がした。それでも向かってくる敵を叩かねばならない。
「メレとダルレは援護してくれ。トロイカとロイアンは私とともに敵に斬り込む!」
ジャック隊長はそう言うと、男たちに突っ込んでいった。その後ろでメレとダルレが攻撃の矢と槍を放っていた。
「グサッ!」「ザクッ!」
ゾンビの男たちに矢や槍が突き刺さるも、それを引き抜いて向かってくる。ジャック隊長たちが剣で切り裂いても男たちはやはり立ち上がって来た。
「隊長! こいつら! 死なないようですよ!」
トロイカの叫びにジャック隊長はうなずいた。
「そのようだ。こいつらはイモータルゾンビという奴だろう。だがどこかに弱点があるはずだ」
ジャック隊長たちは戦い続けた。その終わりの見えない戦いを・・・。やがて体力を消耗していってゾンビにやられるのを待つだけなのか・・・。
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